第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第57節「男なら……」
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(……さよならも言わずに別れて、それっきりだったのよ。なのにどうしてッ!?)
力なく墜落していくクリスの姿に、未来は両手で口を覆う。
その隣では、アイオニアンの男子四人が口々に叫んでいた。
「純ーーーーー!!」
「純ッ!」
「あんな無茶してまで……彼は……」
「何処までも君は……『王子様』を貫いて……」
そして……弦十郎は震えながら、静かに拳を握り締める。
(……お前の夢、そこにあったのか。そうまでしてお前が、まだ夢の途中というのなら──俺達はどこまで無力なんだッ!)
シェルター内が悲壮感に包まれていく中、戦場では……更なる波乱が巻き起ころうとしていた……。
「ああああああああああああああああああああああああああああッ!……あ、ああ……あ……あああ、あ……そんな……」
膝を着き、地面に着いた手を握りしめ、響は涙を流す。
「せっかく仲良くなれたのに……。こんなの、いやだよ……。うそだよ……。う、ううぅ……」
──ドクン……──
灰色に染まった心臓が、鼓動する。
「もっとたくさん話したかった……話さないと喧嘩することも、今よりもっと仲良くなる事も出来ないんだよぉッ!」
──ドクン……──
俯き、膝を屈し、涙を流す少女の胸の内から、何かが広がり始める。
「クリスちゃん……夢があるって、言ったもん。わたし、クリスちゃんの夢、聞けてないままだよ……」
それは少女だけでなく、少女の傍で同じく泣いている少年も同じであった。
「ようやく帰って来たと思ったら……純のやつ、人生大一番のカッコつけやがって……」
──ドクン……──
「お前の夢……まだ終わってないだろ……逢いたがっていた人と逢えたんだ……二人で、一緒に叶えられる夢だったろうがッ!」
──ドクン……──
「二人揃って自分を殺して、月への直撃を阻止したか。……ハッ!無駄な事を」
腕を組み、せせら笑うフィーネ。
その一言に、翔と響の瞳に怒りが宿った。
「見た夢も叶えられないとは、とんだ愚図だな」
「嗤ったか……?命を燃やして、大切なものを守り抜く事を!……お前は無駄と、せせら笑ったかッ!」
自分の命を燃やし尽くし、大切なものを守り抜いた人を翼は知っている。
だからこそ、フィーネの言葉に対する怒りは大きかった。
「「……許せなイ」」
「……ッ!?」
その声に、翼は背後を振り返る。
「……それガ……夢ごと命を、握り潰した奴が言うことかああアアアァッ!」
「……ふざけるナ……二人の未来を奪い去っておいて、何が恋だよこの外道がああアアアァッ!」
「「ウアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァアアアァ
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