第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第56節「守るべきものがある、それが真実」
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る、月穿つ一射。
それに立ち向かうは、ギリシャ神話最高の鍛治神が造り出した盾。
叙事詩に語られる対戦カードで、持ち主を変えた聖遺物同士がぶつかり合う。
それでも、単純な防御性能のみで防ぎきれない事は、純も承知している。現に今、まだ10秒と経たない内から押されつつある。
だから彼は、その盾に願った。大事な人をこの手で、守りきるだけの力を。
(頼む、RN式アキレウス!僕に……クリスちゃんを守る力をッ!)
「燃え上がる太陽になって!ヒカリで照らし続けていこう!いつまでも、傍にいる!それが運命ッ!」
限りない愛を胸に、彼はその盾を支え続ける。
「ジュンくんッ!」
その姿を見て、アームドギアを破壊されたクリスは、空いた両手で盾と、純の身体を支える。
月明かりが二人を照らし、優しく包み込む。
やがて、盾の表面に亀裂が走り始めようと、純は諦めずに歌い続ける。
展開されたエネルギーリフレクターが限界を迎えて消滅を始めようと、クリスは純の身体をもう離そうとはしなかった。
大事な人に支えられ、純は最後の一節を力の限りに叫んだ。
「この想い、永久に刻めぇぇぇぇぇぇッ!!」
〈Zero×ディフェンダー〉
次の瞬間、カ・ディンギルの一撃がバリアを押し切り、純とクリスの姿は閃光に包まれる。
それと同時に、ようやくカ・ディンギルからの砲撃が止んだ。
固唾を飲んで空を見上げる地上の装者達。
やがて……見上げていた月に亀裂が走る。しかしその亀裂は月の中心部ではなく、そのほんの端……。カ・ディンギルの砲撃は、月の3分の1程を掠めただけであった。
「仕損ねたッ!?僅かに逸らされたのかッ!?」
フィーネの声が驚きのあまり上ずっている。翔は慌てて通信を、純のRN式へと繋いだ。
「おい純ッ!生きてるよな!?おいッ!」
『……がはッ……ああ……翔かい……』
吐血音と弱々しい声。絶唱の負荷が、純を襲ったのだと気づくのにかけた時間は一瞬であった。
「お前……」
『ごめん……後は、任せる……』
「おい……おいッ!純ッ!?」
「翔!あれは……ッ!」
翼の声に顔を上げると、そこには光の粒子をまき散らしながら真っ逆さまに落ちていく、2つの人影があった。
白い粒子を散らせているのは、口角から血を垂らし、ぐったりとした様子のクリス。
そしてもう一人……プロテクター各部が破損し、耳あて部分のタイマーを赤く点滅させ、黄緑色の粒子をばら撒きながらも、クリスをその腕にしっかりと抱き締めているのは……その顎を吐血で赤く染めた純だった。
二人は、その命を燃やして月の破壊を防ぎきり、真っ逆さまに墜ちて行く。
リディアンの裏にある森の中へと落下する2人。その直後、大きな激突音が響
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