第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第55節「月を穿つ」
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、翔じゃねえか!」
「まさか、本当に……」
「純が着ているプロテクターと似ている……。間違いない、あのプロテクターは本物だ!」
「アーティストの翼さんまで……!?」
紅介の声に反応して、続々と藤尭の隣へと集まるUFZの4人。
リディアンの3人と未来も含めて、管制を担当する藤尭の周囲には、この場の一般人8人が密集する。藤尭は彼らに仕事の邪魔にはならないよう、念を押すと、コンソールの操作に戻った。
そして、彼らが地上の映像に夢中になっている頃、純は弦十郎の前に歩み寄る。
「翔の叔父さん……」
「風鳴弦十郎だ」
「ああ、どうも。……弦十郎さん、地上への出口は何処にあります?」
「……聞いてどうするつもりだ?戦うつもりだとすれば、俺は戦士ではない君が戦場へ出る事など許さんぞ」
弦十郎は純の考えを察したのか、険しい表情で彼を見る。
彼の顔を真っ直ぐに見て、純は迷わずに答えた。
「戦うんじゃありません。クリスちゃんを助けに行きます……。いえ、行かせてくださいッ!」
「クリスくんを、助けに……か」
「僕はクリスちゃんを助けたくて、フィーネのアジトまで突き止めた。そして、クリスちゃんを守る為にこの力を手に入れた。……アイオニアンまでの通路は解放されています。恭一郎達が、避難誘導を手伝ってくれるでしょう。翔との約束はここまでです。僕は、あそこへ戻ります!クリスちゃんを守る為に……そして、フィーネの真意を聞くために!」
「……フィーネの、真意?」
弦十郎はその言葉に目を見開く。
「クリスちゃんを助けにアジトへ忍び込んだ時、フィーネは僕を殺せるはずでした。でも、あの人は僕を殺さなかった。気紛れだと言ってましたが、僕はその真意を知りたい!だから、行かせてください!」
「……わかった。君を、RN式アキレウスの正式な装者として認める」
「ッ!ありがとうございますッ!」
勢いよく頭を下げる純に、弦十郎は希望を託す。
彼はフィーネに……了子に助けられたという。それはつまり、フィーネにもまた、『櫻井了子』として過ごした時間が刻まれている可能性を示唆していた。
純はフィーネの良心を確かめたいと言う。事態が収束すれば、聞きたいことは自分で聞きに行くが……自分には今、二課の司令としての役割がある。
だから今、自分にできることは、彼の背中を押すことだ。
「エレベーターホールの近くに、地上へと続く非常階段がある。長いがなんとか走り抜けろ!」
「はいッ!」
そう言って純は、マスクのなくなったメットを被る。バイザーが降り、ディスプレイが起動したのを確認すると、彼はエレベーターホールの場所まで全力で駆け出して行った。
「おい、純!……あーあ、行っちまったよ」
「純も行くんだな……地上に。この戦場のただ中に……」
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