第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第54節「カ・ディンギル出現」
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ってさえいなければ……こんな事にはならなかっただろう。
(了子くんが内通者だったのは気が付いていた……。しかし、黒幕であるなどどうして疑えるものかッ!)
何となく、気が付いていた。これまでの出来事を振り返る度に、元公安の勘が告げていた。
一連の事件の黒幕は、二課の内情に詳しく、聖遺物の取り扱いに長け、自分達を巧みに誘導できる立場にいる彼女以外に有り得ないと。
それでも……彼女を疑いたくなかった。内通者だとしても、その裏に真の黒幕がいる。そうであって欲しいと、願ってしまった。
(彼女が黒幕だとしたら……俺は、どうすれば彼女を止められた?……了子くんがこんな事をする為に、何人も犠牲にして、多くの被害を出してでも為し得ようとした企みを、どうすれば止められていたのだ……)
やがて、弦十郎は一つの後悔に行き当たる。
それは、己が頑固さ故に伝えられなかったもの。今となってはもう遅い、胸の奥に仕舞ったままとなっていた想いだ。
(……もしも、俺が素直に言えていれば……了子くんは踏み留まってくれたのだろうか?……もし俺がそうなれていれば、俺は君の裏側に気付いてやれたのだろうか……。……大莫迦者だな、俺は……)
考えるだけ意味が無いのは分かっている。今頃遅いのも理解している。
それでも弦十郎は、その時ばかりは珍しく……普段見せないような表情をしていた。と、友里を手伝っていた職員の一人は語っていた。
紅い月が夜空に怪しく輝く。既に日は沈み、昼間は当たり前の日常に充ちていた姿は見る影もなく、崩れ落ちたリディアンは夜の闇に包まれていた。
「未来……」
ようやく到着した4人の装者は、その光景を見回す。
「未来ーッ!みんなーッ!……ああ」
「落ち着け響、多分地下のシェルターだ」
「リディアンが……あッ!?」
翼が崩れず残っていた校舎の屋上を見上げると、そこには……こちらを見下ろし笑っている、櫻井了子が立っていた。
「──櫻井女史ッ!?」
「フィーネッ!お前の仕業かぁッ!?」
「ッ!?了子さんが、フィーネ……!?」
「ふ……フフフフ。ハハハハハハハハッ!」
クリスの言葉に驚く風鳴姉弟を見て、了子は声を上げて笑った。
「──そうなのかッ!?その笑いが答えなのかッ!櫻井女史ッ!!」
「あいつこそッ!あたしが決着を付けなきゃいけないクソッタレッ!──フィーネだッ!」
了子は眼鏡を外し、結んでいた髪を下ろす。
次の瞬間、了子の身体は青白い閃光に包まれ、そのシルエットが変わって行く。
「嘘……」
「その姿は……ッ!」
やがて光が弾けると、そこにはモデルのような美しい体を黄金に色を変えたネフシュタンの鎧に包んだ、金の長髪を持つ女性が立っていた。
それを
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