第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第53節「リディアン襲撃」
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あああああああッ!」
廊下全体に反響する、未来の悲鳴。
意識を失い倒れる弦十郎のポケットから、フィーネは血に濡れた通信機を奪い取る。
「抗おうとも、覆せないのが運命というものなのだ」
鞭を伸ばしてソロモンの杖を天井から引き抜くと、それを倒れた弦十郎へと向けながら言い放つ。
「殺しはしない。お前達にそのような救済など、施すものか……」
そしてフィーネは、弦十郎から奪い取った通信機でロックを解除すると、デュランダルを手中に収めるべく、アビスへと進んで行った。
「司令……司令ッ!」
後に残された緒川は、弦十郎へと駆け寄る。
未来はただ、何も出来ずに立ち尽くすしかなかった。
「目覚めよ、天を衝く魔塔。彼方から此方へと現れ出よッ!」
とうとうアビスへと到達したフィーネは、保管されたデュランダルの前にあるコンソールを操作し、カ・ディンギルを起動させる。
魔塔がその威容を現す瞬間は、間近に迫っていた……。
その頃、司令室の職員達は固唾を飲んで、街を埋めつくしたノイズの群勢と装者達の戦いを見守っていた。
クリスの作戦が成功し、空中要塞型ノイズが爆発したまさにその時、司令室の扉が開く。
負傷し、緒川と未来に支えられた弦十郎を見て、友里が驚いて立ち上がる。
「……司令ッ!?その傷は!?」
「応急処置をお願いします!」
ソファーに寝かされた弦十郎のワイシャツを開き、友里と医療の心得がある職員が応急処置に当たる。
その間に緒川は、友里の席のコンソールを操作し、響の通信機へと回線を繋ぐ。
「本部内に侵入者です。狙いはデュランダル、敵の正体は──櫻井了子!」
「な……ッ!」
「そんな……」
緒川からもたらされた信じ難い事実に、藤尭、友里を始めとしたスタッフ達が驚愕する。
「響さん達に回線を繋ぎました!」
「……響ッ!学校が、リディアンがノイズに襲われているのッ!」
未来が言い終わるその前に、モニターの電源が落ちた。
「何だッ!?」
驚く緒川に、職員達がコンソールによる操作を試みながら答える。
「本部内からのハッキングです!」
「こちらからの操作を受け付けません!」
立体操作型のコンソールが、強制的にシャットダウンされ消滅していく。
「こんな事が出来るのは、了子さんしか……」
藤尭は、先程の言葉が事実だと確信する。もはや、二課の設備はフィーネの手により完全に掌握されていた。
「そんな……響……風鳴くん……」
薄暗くなった司令室の中、未来の前に広がるモニターには、砂嵐が走り続けるだけだった。
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