第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第53節「リディアン襲撃」
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その僅かな隙間を潜って、クロールノイズは侵入しようとする。
しかし、間一髪。エレベーターが降下を始め、クロールノイズ達はエレベーターへと侵入することなく、リディアンの1階エレベーター前に取り残された。
ホッと息を吐き出し、床へとへたり込む未来。緒川は通信機を弦十郎へと繋げた。
「……はい、リディアンの破壊は、依然拡大中です。ですが、未来さん達のお陰で、被害は最小限に抑えられています。これから未来さんを、シェルターまで案内します」
『わかった、気を付けてくれ』
「分かりました。それよりも司令、カ・ディンギルの正体が判明しました!」
『なんだとッ!?』
「物証はありません。ですが、カ・ディンギルとはおそらく──ッ!?」
その時、エレベーターの天井が音を立てて凹み、窓ガラスに亀裂が走る。
天井を破って現れた人物。未来の悲鳴が、エレベーターシャフト内に反響した。
「きゃああああああッ!?」
『どうした、緒川──ッ!』
途切れる通信。緒川は、天井から入って来たその人物に首を掴まれ、持ち上げられていた。
「う、うう……」
「こうも早く悟られるとは……。……何がきっかけだ?」
腰まで伸びた金髪に、全身を覆う刺々しい黄金の鎧。ネフシュタンを纏ったフィーネは、それを突き止めた緒川を睨みながら問い詰める。
「塔なんて目立つものを、誰にも知られることなく建造するには、地下へと伸ばすしかありません……。そんな事が行われているとすれば、特異災害対策機動部二課本部──そのエレベーターシャフトこそ、カ・ディンギル!そして、それを可能とするのは──」
「……漏洩した情報を逆手に、上手くいなせたと思っていたのだが──」
ポーン
エレベーターがフロアに着いた音が響く。
ドアが開いた瞬間、緒川はフィーネの手を振り解いてそこを飛び出すと、懐から取り出した拳銃を3発連続で発射する。
剥き出しの生身、腹部に命中した弾丸はその皮膚を突き破ることなく潰れ、全て床に落ちた。
「ネフシュタン……ッ!ぐああーッ!」
エレベーターから飛び出した際に距離を取っていた緒川。しかし、フィーネはネフシュタンの鞭を振るい、緒川の身体を締め上げる。
「緒川さんッ!」
「ぐっ……うっ……ぐああッ……!み、未来さん……逃げ、て……」
「ッ!……くっ……このっ!」
緒川に逃げるよう言われたが、未来は逃げない。目の前の緒川は放っておけないし、何より響と約束したのだ。帰る場所は守ってみせると。
未来はフィーネの背に体当たりする。しかし、フィーネは微動だにしなかった。
「……」
「ひっ……」
背後を振り返り、未来をひと睨みするフィーネ。
縛り上げていた緒川を投げ下ろすと、彼女は未来の顎に指を添えた。
「麗しいなぁ
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