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戦闘携帯のラストリゾート
挑戦者に手を引かれ
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ベンチに座りなおして、バツが悪そうに頬をかくサフィール。

「えっと、聞かれたくなかったらごめん。君はどうして怪盗になったの?」
【おや、いきなり核心をつきますね。どうします?】

 ちょっと考える。あまり積極的に人に話したいことではない……でも、それでお礼になるならいいかもしれない。

「事情が複雑だからうまく説明できないかも……それでもいい?」
「本当にいるのか半信半疑なところもあったし、君がどうして怪盗になったのか是非聞きたいな」

 確認してから、頭の中で話す順序を考える。その間サフィールは笑みを浮かべて急かさず待ってくれた。

「わたしね、昔は女の子の格好で人前に出るのが怖かった」
「えっ? どういうこと?」

 彼は意外そうな顔をする。それならなんで怪盗やってるのかってなるもんね。

「だよね。きっかけは、母さんが小さいころ病気で死んじゃったんだ。父さんはすぐに別の人と再婚してわたしはその家に預けられて……新しい姉さんも母さんにも意地悪ばかりされて泣いてばかりだった。サイズの合わない洋服を無理やり着させられて、似合わないって馬鹿にされたりね」

 思い出したくはない、人に笑われた記憶。それをこんな風に話せるようになったのは……スズや、『模犯怪盗』のおかげ。

「そんなわたしを、スズが救ってくれた。わたしは親がいない子供の住む家に預けられたの」
「孤児院ってやつ?」
「うん。今は一人しか住んでる人がいなくてね。……その人が、アローラでの最初の怪盗だった。怖い人じゃないかって不安だったんだけど。のんびり屋で、優しくて……怪盗として動いてるときはとてもカッコいいの。わたしと二つしか年が違わないのに」
「……すごい人なんだね」
「それでね、わたしもこの人みたいになりたい。この人に正面から向き合えるような人になりたいと思った。だからわたしも、怪盗になると決めたの。……これで伝わったかな?」
【あの時は驚きましたねえ。まさかあなたが怪盗になると言い出すとは思いませんでした】
 
 サフィールはしばらく黙った後、真面目な表情を作って言う。
 
「そっか……君も、辛い思いをしてきたんだね」
「でも今は大丈夫。スズは余計なことばかり言って困っちゃうけどね」
「あはは、いいコンビだと思うよ。ところでさっきの話だと、最初の怪盗は孤児だったりするの?」
「そうみたい、物心ついたときには親はいなかったんだって」
「……なのにそんなに君に慕われるなんて、きっとすごい人なんだね」

 どこか遠くを見つめてサフィールは言った。……この人にも、何か家族でつらい思い出があるのかな。

【さて、では今度はスズからサフィール君に聞きたいことがあるのですが、よいですか?】
「オレに?答えられることならいいよ」

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