第5楽章〜交わる想い、繋がるとき〜
第52節「繋いだ手だけが紡ぐもの」
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思っている。
何より、彼女を深く悲しませる事になってしまった事は、僕にとってはとても重い罪だ。
だから、頬を打たれようが、殴られようが仕方ない。そう覚悟して、目を閉じた。
……彼女の足音がすぐ目の前まで来た。しかし、頬に広がる痛みは無い。代わりに、鎧越しなので分かりにくかったが……背中に手が回された事に気が付いた。
「ここか……?」
ガチャリ、と音がしてロックが外れる。
次の瞬間、胴体を覆っていたアーマーが外れて地面へと落ちる。
「よし。これでようやく……」
目を開けるのと、その温もりに包まれたのはほぼ同時だった。
クリスちゃんはアーマーが外れた僕に、思いっきり抱き着いていた。
「クリスちゃん……怒らないのかい……?」
「ったりめーだろ……悪いのはあたしなんだから……。あたしがあの時逃げ出さなければ、ジュンくんがこんな事する必要は……」
「……ごめんね。辛い思いをさせてしまって……」
俯く彼女の背中に手を回す。小さな背丈の彼女は、腕の中にすっぽり収まるだけでなく、丁度その頭が僕の胸の位置に来る。
「……ジュンくん……あ、あたし……ジュンくんにずっと、言いたかった事があるんだ……」
「……なんだい?」
少し彼女から離れると、その顔を真っ直ぐに見つめる。
僕の顔を見上げながら、クリスちゃんは意を決したように言葉を紡いだ。
「その……あたしの事、ずっと待っててくれたんだよな……?」
「一日たりとも、忘れるもんか」
「……小さい時の約束も、覚えてるんだよな……?」
「その約束があったから、今の僕がいるんだ」
「……ッ!……じ、じゃあ……い、今のあたしを見て……どう、思う?」
クリスちゃんは、少し自信なさげにそう呟いた。声が小さくなり、彼女は俯く。
「こ、言葉もぶっきらぼうだし……銃とかミサイルぶっ放つし……性格だってひねてるって言われたし……。あの約束を、殆ど全部叶えてるようなジュンくんと比べたら、あたしは……」
「……クリスちゃん。お姫様の条件って、なんだと思う?」
「え……?」
僕の言葉に、クリスちゃんは首を傾げる。その可愛らしい様子にくすっ、と微笑む。
「簡単さ。“王子様が選んだ女の子であること”。それだけがその条件だと、僕は思ってる」
「王子様が……選んだ……?」
「そう。僕はあの日からずっと、理想の『王子様』を目指してここまで自分を磨いてきた。今の僕は、それを名乗るに相応しい男になれたと自負している。なら、あとは約束のお姫様を迎えに行くだけだ。そして、その王子様が迎えに行く女の子が『お姫様』でないわけが無い。そうだろう?」
「ッ!じ……じゃあ、あたしは……」
「あの約束を交した日からずっと、クリスちゃんは変わらず、僕のお姫様だよ。どれだけ性格がひねくれたって
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