第5楽章〜交わる想い、繋がるとき〜
第49節「王子の行方」
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言い切る前に、拳銃を構えた黒服のエージェント達が部屋へと突入する。
取り押さえられると思い、抵抗しようと構えるクリス。
しかし、黒服達は彼女を通り過ぎて行った。困惑するクリスの頭に、弦十郎の手が優しく乗せられる。
「誰もお前がやったなどと、疑ってはいない。全ては、君や俺達の傍にいた彼女の仕業だ」
「えっ……」
弦十郎の顔を見上げるクリス。
弦十郎はクリスから手を離すと、死体の顔や服装を見て確信したように呟く。
「……倒れているのは米軍のようだな。やはり裏で繋がっていたか──」
「風鳴司令ッ!」
エージェントの1人が、米軍兵のリーダーらしき人物の死体に貼られていた、置き手紙らしきものを剥がす。
次の瞬間、ブービートラップが作動し、部屋の各所に仕掛けられていた爆弾が爆発した。
爆煙に包まれる部屋。崩れ落ちる天井。何とか落下する瓦礫を回避したエージェント達は、幸い1人として負傷すること無く互いの無事を確認する。
そして、弦十郎とクリスのたっていた地点は……なんと、瓦礫を片手で持ち上げながら、空いた方の腕にクリスを抱いて庇う弦十郎の姿があった。
「え……?」
クリスは目を見開いて驚いていた。
「どうなってんだよ、こいつは……!」
「衝撃は『発勁』でかき消した」
「そうじゃねぇよッ!離せ……よッ!」
弦十郎の腕を振り払い、クリスは弦十郎から離れると、その顔を睨む。
「何でギアをまとえない奴が、あたしを守ってんだよ!」
その手で止めた瓦礫を床に降ろし、弦十郎はクリスの方を振り返る。
「俺がお前を守るのは、ギアの有る無しじゃなくて、お前よか少しばかり大人だからだ」
「大人……?あたしは大人が嫌いだ!死んだパパとママも大嫌いだッ!とんだ夢想家で臆病者!あたしはあいつらとは違う!歌で世界を救う?戦地で難民救済?いい大人が夢なんか見てんじゃねーよッ!」
「大人が夢を、ね……」
弦十郎が呟く。クリスは拳を握りながら続けた。
「本当に戦争を無くしたいのなら、戦う意思と力を持つ奴らを片っ端からブッ潰していけばいい!それが一番合理的で現実的だッ!」
「そいつがお前の流儀か。なら聞くが、そのやり方で、お前は戦いを無くせたのか?」
「──ッ!?それは……」
弦十郎の言葉に、クリスは反論出来なかった。
ついこの間、自分がその流儀に基づいて行った行動で、無関係な人々を危険に晒した事を思い知らされたからだ。
クリスの様子を見て、今度は弦十郎が自らの言葉を紡ぐ番となった。
「……いい大人は夢を見ない、と言ったな。そうじゃない。大人だからこそ、夢を見るんだ。大人になれば背も伸びるし、力も強くなる。財布の中の小遣いだってちっとは増える。子供の頃はただ見るだけだった夢も、大人になったら叶えるチ
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