第5楽章〜交わる想い、繋がるとき〜
第49節「王子の行方」
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「しぶといわね……ボウヤ」
何度目かの攻撃の後、フィーネはそう呟いた。
目の前には、鞭による擦り傷と蚯蚓脹れでボロボロになりながらも、まだ立ち上がろうとする少年の姿。
「そんなにボロボロになって、それにネフシュタンの侵食も進んでいるはず。なのにどうして、ボウヤは立ち上がれるのかしら?」
「そんなの……決まっているだろう……!」
ヨロヨロと立ち上がり、痛みに歯を食いしばりながら拳を握る少年。
フィーネを睨み付けると、少年は絞り出すような声で吼える。
「愛する人を守るため……!この想いを伝えるために、僕は、クリスちゃんには生きててもらわなくちゃいけないんだ!」
「想いを……伝えるため……」
その言葉に、フィーネは一瞬だけ動揺したような表情を見せる。
「……馬鹿ね。このまま続ければ、その左手は鎧に食い破られて、その命も私の手で刈り取られる。ボウヤに希望はないのよ?」
「それでクリスちゃんが守れるなら、左手ひとつ、安いものさ……ッ!うぐっ、うっああ……!」
拳を握り締め、構えようとして……鎧の侵食に苦悶の声を漏らす少年。
蹲りそうになりながらもなお、膝を屈しようとしないその姿に何を思ったのか……フィーネは鞭から手を離すと、その場を離れる。
「なっ……ま、待て……っぐ!」
「……ちょっとその左手、貸しなさい」
間もなく戻ってきたフィーネは少年の左手首を掴むと、その手にスタンガンを押し当てた。
「ッ!?ぐあああああああああああッ!」
「……はぁ。侵食してると言っても、所詮は欠片。クリスほど酷くはない事を幸運に思いなさい」
そう言ってスタンガンを離すと、少年の左手から金属片が床へと落ちた。
フィーネの行動に、少年は困惑の表情を見せる。
「なっ……え……?」
「勘違いしないで頂戴。助けられたなんて思わない事ね、ボウヤ。これは取引よ」
「取引……?」
「そう。私はボウヤを殺さないでおいてあげるし、なんならクリスの命も見逃してあげる。その代わり、私の計画を手伝いなさい。ボウヤは私が計画を進められるよう、私の身を守る騎士になるの」
その言葉に、少年は迷いを見せる。この魔女に手を貸せば、何かまずい事になるのは目に見えている。しかし、そうしなければこの魔女は自分を殺すだろう。なにより、自分だけでなくクリスの命も危うい。
少年に残された道は、一つしかなかった。
「……本当に、クリスちゃんには手を出さないんだな?」
「ええ。私は米国の連中とは違うの。契約は守るわ」
「……もう1つ。どうして気が変わったんだ?」
「そうね……ただの気まぐれよ。ちょっとだけ、殺すのが惜しくなっただけ」
その言葉に、少年は訝しげな表情でフィーネを見る。
フィーネは少年に顔を近づけると、契約への是非を問う。
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