第5楽章〜交わる想い、繋がるとき〜
第48節「君色に染まる空の下で……」
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上にずっと嬉しくって……なんだか、涙が出て来ちゃいました……」
「そうか……。緒川さん、居るんでしょう?」
「え……?」
翼が言った次の瞬間、その背後にシュタッという音と共に緒川が現れた。
「いつから気付いていたんです?」
「何となく、です。仮にも『見守り隊』の副隊長であるあなたが、こんなイベント逃す筈がないでしょう?」
「部下の皆さんに送り出されましてね。僕の代わりに仕事を引き受けるから、初デートはちゃんとカメラに収めてこい……と焚き付けられちゃいました」
「緒川さんも何だかんだでノリノリですよね……。小日向にハンカチかティッシュを」
翼にそう命じられ、緒川は未来にポケットティッシュを渡す。
未来は突然のNINJAに驚きながらも、受け取ったポケットティッシュで涙を拭いた。
「それで、翼さんの方は今日一日、どうだったんですか?」
緒川にそう聞かれて、翼は今日の朝からこの瞬間までを振り返り、夕陽を見ながら呟く。
「本当に今日は……知らない世界ばかりを見てきた気分です」
「……そんな事ありませんよ。ほら、見て下さい翼さん」
翼の言葉に、緒川はふむ、と何か考えるような仕草をすると、やがて翼の方へと手を差し伸べた。
何事かと疑問に思いながらも、その手を握った翼は、緒川にエスコートされるように、そっと手を引かれながら柵の方へと近付く。
「お、緒川さん?……あ──」
翼の目の前に広がる光景。それは、夕陽に照らされ、オレンジ色に染まった街と海だった。
緒川はその光景に圧倒される翼を見て、優しく言った。
「あそこが今朝、響さん達と待ち合わせしていた公園です。あそこがリディアンで、あそこはふらわー。皆さんが一緒に遊んだ所も、今日は遊んでない所も、全部翼さんの知ってる世界です。今、目の前に広がっているのは、昨日に翼さんが戦ってくれたから、今日に皆が暮らせている世界ですよ」
「これが……私が守っている、世界……」
「……だから、知らないなんて言わないでください」
そう言って緒川は、いつもと変わらない……いや、いつもよりも少し柔和で、どこか慈しみの浮かんだ笑みを向けた。
(あ……思い出した……。奏も昔──)
その言葉に、翼はかつて、奏が夢の中でも言っていた言葉を思い出す。
『戦いの裏側とか、その向こうには、また違ったものがあるんじゃないかな?あたしはそう考えて来たし、そいつを見て来た』
「──そうか。これが、奏の見てきた世界なんだ……」
「……と、らしくない事を言ってしまいましたね。それでは、僕はこの辺で。下に車を回して来ますね」
翼は振り返ると、立ち去ろうとする緒川に声をかける。
「緒川さん……。ありがとう、ございます」
「……
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