第5楽章〜交わる想い、繋がるとき〜
第48節「君色に染まる空の下で……」
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だ!
そう自分に言い聞かせて、深く深呼吸すると……わたしは、翔くんを呼んだ。
「翔くん!」
「ん?どうした、立花?」
「その……こっち、来てくれないかな……?」
そう言ってわたしは翔くんの腕を引く。
翔くんは目を大きく開いて、少しだけ沈黙すると、やがて答えた。
「わかった……」
立花と2人で街を見下ろす。眼下に広がる街並みも、広がる海も、見上げる空も。全て一面のオレンジに染まっていて……その色はやっぱり、あの日の放課後を思い出す。
そのオレンジの中で、俺は再び立花と向き合っている。夕陽に照らされたその顔は、あの日よりも少しだけ幼さが消えていた。
「……翔くん、あのね……」
緊張した様子で、立花が切り出す。
ああ、分かっている。立花の様子を見れば、分かってしまう。どんな鈍感でも、ここまでされて分からない筈がない。いたらぶん殴られても文句が言えないはずだ。
もう既に、迷いはなかった。姉さんと、多分小日向も背中を押してくれたんだ。覚悟はとっくに決まっている。
本当なら俺から先に仕掛けたかったけど、立花に先を越されてしまった以上、先に聞いてやらないのは無粋だろう。
俺は息を呑んで、次の言葉を待った。
「わたし……翔くんのことが好き。……ううん、大好き!」
「ッ!……お、俺の事が!?」
「うん……。優しくて、強くて、かっこよくて……わたしにとって、世界で一番の男の子。それが、わたしにとっての翔くんなんだ……」
自分で言って、自分で赤くなりながら、立花は俺への愛を真っ直ぐにぶつけて来る。
その一言一言に、俺の心は何度も打たれていった。
「だから……その……」
両手を後ろで組みながら、もじもじと揺れる立花。その愛らしい姿に、俺の視線は釘付けになる。
そして立花は、しばらく溜めた後、遂にその言葉を解き放った。
「わっ、わたし、立花響とお付き合いしてくださいッ!!」
……ああ、そうか。
俺はようやく……君のその手を取って、共に歩んで行くに相応しい男になれたんだな……。
強く、深く、それを実感する。その言葉だけで、俺は満たされていった。
だが、これで満足するにはまだ早い。今度は俺の番だ。
両目を瞑って右手を差し伸べている立花の手を取ると、俺はその手を引っ張り、立花の身体をこちらへと引き寄せた。
強く引っ張られる感触と、身体を包む温かさ。
その、覚えのある温かさに目を開くと……わたしは、翔くんに抱き締められているのだと理解した。
全身が熱くなる。心臓が早鐘を打つようにバクバクと高鳴り、顔が真っ赤になるのを感じた。
「……俺も、立花の事が大好きだ。……ああ、あの頃から
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