第5楽章〜交わる想い、繋がるとき〜
第47節「デート大作戦」
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感動の涙だと分かってはいる。しかし、やはり響の泣いている顔を見るのは、少々思うところがあった。
何と言えばいいのか、彼の中の庇護欲が彼を掻き立てて仕方が無いのだ。
ふと、翔の視界に入ったのは、肘掛けに置かれた響の手だった。
涙も拭かずに見入ってしまっている為、その集中を割くことは躊躇われる。
しかし、それでも彼は抗うことが出来ずにその手をそっと掴んだ。
「っ……!」
響が驚いて翔の方を振り向く。翔は照れ臭そうに頬を掻きながらも、視線をスクリーンへと逸らした。
響はしばらく翔の方を見ていたが、やがて頬を赤らめたまま、スクリーンへと視線を戻す。
映画の内容よりも甘い空気が、二人の間を漂っていた事は言うに及ばず。
その後、響はエンドクレジットまで、その左手に誰よりも大好きな人の温もりを感じ続けているのだった。
もっとも、映画の内容が結構飛んでしまったのは、言うに及ばず。
しかしこの程度、得られた時間に比べればきっと安いものだろう。
「良かった……本当によかった……」
映画が終わった後で購入したソフトクリームを舐めつつ、翼がそう呟く。
「最後はどうなることかと心配しましたけど、タイトルは嘘をつきませんでしたね……」
ストロベリー味のソフトクリームを舐めながら、未来もその言葉に同意する。
「ねえ響。響はさっきの映画……」
未来は響の方を振り向いて……何かを察したような表情になった。
響は先程の事を思い出し、少々頬を赤らめていた。お陰で抹茶味のソフトクリームが溶けかけている。
「響!溶けかけてるよ!」
「えっ!?わっ!危ない危ない……」
慌ててソフトクリームを全力で舐める響。その後ろでは、同じく頬を赤らめた翔が、気を紛らわすかのようにチョコレート味のソフトクリームを舐め続けていた。
「響、映画見てる間に何かあった?」
「いっ、いや、そのっ!ななななんでもない!」
「そう?ならいいけど……。次はお洋服見に行こっ!」
「そっ、そそそそうだね!」
誤魔化すようにあたふたとする響を見ながら、翼は翔にこっそりと耳打ちした。
「翔、さては立花と何かあったな?」
「なっ!?ね、姉さん!何かってなんだよ!?」
「何だ、てっきり立花と手でも繋いでいたかと思ったが……」
そう言った瞬間、より一層頬を赤らめた弟を見て翼は悟った。
「図星か」
「い、いいだろ別に……」
「お前は本当に立花に首っ丈だな」
「ッ!?……やっぱ姉さんにはバレてるか……」
観念したように呟く翔を見て、翼は微笑む。
「翔、これはあなただけにする話なんだけど……実はこのデート、翔のために計画されているの」
「え?」
「小日向にもバレてるのよ?立花への片想い」
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