第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第45節「一番あったかい場所」
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来る。
……その中で、わたしはいつか翔くんに、この胸の想いを伝えなくちゃいけない日がやって来る。
その時には、きっと小日向にも。
そうなったら、きっと未来にも。
祝って貰えたらいいな……。そう、心の中で願ってみた。
「……ここにするか」
廃墟になったアパートの白い壁を見上げて、クリスは呟いた。
フィーネに捨てられ、助けてくれた未来やふらわーのおばちゃんを巻き込み、信用出来る人間や頼れる身内のいない彼女は、一晩を明かす寝床を探していた。
既に昨日の夜から一日中、何も食べていない状態が続いている。
腹が鳴って仕方がないものの、食べるものは何も無い。
人の居なくなった商店街、何処かから万引きする事も考えたが、いつ人が戻ってくるか分からない以上は気が引けた。
「……腹減ったなぁ……」
既に背中とくっつきそうなお腹に手を当てながら、クリスはアパートへと向かって行く。
その時だった。聞き覚えのある……否、今の状況ではあまり聞きたくない雑音が、彼女の耳に届いた。
キュピッキュピッ、キュピキュピッ
ゾッとしながら振り返ると、そこには軽快なステップを踏みながら歩いて来るブドウノイズの姿が。
「チッ!昼間あれだけやって、まだやり合おうってのか!!」
シンフォギアのペンダントを握り締め、聖詠を唱えようとしたその時だった。
ブドウノイズは立ち止まると、その細長い手にぶら下げていたビニール袋を、地面に置いた。
「ッ!?な、なんだぁ!?」
そしてブドウノイズはクリスに向かってぺこり、と頭を下げるとそのまま後ろを向いて走り去って行く。
「おっ、おい!待ちやがれ!!」
慌ててノイズを追い、走るクリス。
しかし角を曲がると、そこには何もいない。ブドウノイズの足の速さは、そこまでではなかったはずだ。すぐに追いつける筈の場所で見失った……それはつまり……。
「……なんだったんだ、あのノイズ」
クリスは訝しげに、アスファルトに置かれたビニール袋を拾って中身を見る。
中に入っていたのは、ペットボトル入りの水と茶封筒。茶封筒を空けると、中には一万円札が2枚入っていた。
「こっ、こいつは……!?」
人を殺す為だけに生み出されたノイズに、こんなものを届けさせる事が出来る方法はただひとつだけ。ソロモンの杖を持つ者だ。
「フィーネのやつ、どういうつもりだ!?」
ふざけやがって、と袋ごと投げ捨てようとするクリス。
しかし、そこでまた腹の虫が鳴いてしまう。
「……くっ!」
忌々しげに封筒を見るクリス。しかし、封筒を裏返した瞬間、その表情は驚愕に変わった。
茶封筒の裏には、綺麗な字でメッセージが書かれていたのだ。
差出人の名前はな
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