第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第43節「優しく差し伸べられた手を」
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が早いですって!」
「ふふ……」
響は翼を気遣い、屋上のベンチに二人で腰掛けると、俯きながら話を切り出した。
「……わたし、自分なりに覚悟を決めたつもりでした。守りたいものを守るために、シンフォギアの戦士になるんだって。……でも駄目ですね。小さな事に気持ちが乱されて、何も手に付きません。わたし、もっと強くならなきゃいけないのに……変わりたいのに……」
翼はふと、考え込むような仕草をすると、静かに答える。
「その小さなものが、立花が本当に守りたいものだとしたら、今のままでもいいんじゃないかな……」
響の方に顔を向け、翼は続ける。
「立花は、きっと立花のまま強くなれる」
「翼さん……」
「……奏のように人を元気づけるのは、難しいな」
「いえ!そんなことありません!前にもここで、同じような言葉で親友に励まされたんです。それに、翔くんからも」
「翔も私と同じ事を?」
翼は驚きながらも、何処か納得していた。血を分けた弟だ、そんな事もあるだろう。
むしろ、姉弟の繋がりを感じる事ができて嬉しい。それが翼の本音だ。
「それでもわたしは、また落ち込んじゃいました。ダメですよね〜……それより翼さん、まだ痛むんですか?」
「大事を取っているだけ。気にするほどではない」
「そっか、良かったです」
「……絶唱による肉体への負荷は極大。まさに他者も自分も、総てを破壊し尽くす"滅びの歌"。その代償と思えば、これくらい安いもの」
自嘲気味にそう漏らす翼に、響はベンチを立ち上がる。
「絶唱……滅びの歌……。でもっ!でもですね、翼さん!2年前、辛いリハビリを乗り越えられたのは、翼さんの歌に励まされたからですッ!」
翼は響の顔を見上げる。響は翼の顔を真っ直ぐに見ながら続けた。
「翼さんの歌が、滅びの歌だけじゃないってこと……聴く人に元気をくれる歌だってこと、わたしは知っています!」
「立花……」
「だから早く元気になってください!わたし、翼さんの歌が大好きですっ!」
「……ふふ、私が励まされてるみたいだな」
「え、あれ……?はは、あはははは」
互いに励まし、励まされ、笑い合う二人。
しかし──そこに、不穏な音が鳴り響いた。
ヴヴヴヴヴゥゥゥゥ────!!
「──警戒音ッ!?」
響と翼は立ち上がり、二課の通信機を手に取った。
「翼です!立花も一緒にいます!」
『ノイズの反応を検知した!相当な数だ、恐らく未明に検知されたノイズと何らかの関連がある筈だ』
「分かりました、現場に急行します!」
しかし、意気込む翼を弦十郎は厳しく静止する。
『駄目だ!メディカルチェックの結果が出ていない者を、出す訳には行かない!』
「ですが!」
「翼さんは皆を守って下さい。だったらわたし、前だけを向いてい
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