第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第42節「陽だまりと雪姫」
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って、走って、走り続けて。だけどその先に、ゴールは見えない。
一寸先も、そのまた先も、ずっとずーっと闇だらけだ……。
あたしは、どこを目指して走ればいいんだろう?
……顔を上げると、そこには見覚えのある後ろ姿があった。
一昨日見たばかりの、学生服を着たジュンくんだ。
「ジュンくんッ!!」
その背中を追いかけて、走る。
走る。走る。走る。
でもジュンくんには全然追いつけなくて、それどころかジュンくんはあたしからどんどん遠ざかっている。
……違う、遠ざかってるのはジュンくんじゃなくて、あたしの方だ。
それに気が付いた瞬間、目の前の背中は見えなくなってしまった。
「ジュンくん……ううっ、なんでだよぉ……。ジュンくん!!」
膝を付き、涙を流す。地面を殴って嗚咽を漏らす。
どうしてあたしは……。
ジュンくん……何処に行っちまったんだよぉ……。
「ん……。……え、あ……ここ……は……?」
目を覚ますと、見覚えのない木製の天井が広がっていた。
……あたしは……確か倒れて──。
起き上がって見回すと、何処かの家の和室で、あたしは布団に寝かされていた。
よく見ると服は体操着に着替えさせられていて、胸には『小日向』と名前が書かれている。
「良かった、目が覚めたのね。びしょ濡れだったから、着替えさせてもらったわ」
起き上がったあたしの右に座り、洗面器に入った水にタオルを浸して絞っていたのは、一昨日うっかり吹き飛ばした黒髪の一般人だった。
「ここはどこだ!それにお前は──ッ!」
「あなたが病院は嫌だって言ってたから、知り合いの家を貸してもらっているの」
「なっ!?勝手な真似を……」
「未来ちゃん、どう?お友達の具合は」
そこへ、洗濯物が入った籠を持ったおばさんがやって来る。
「目が覚めたところです。ありがとう、おばちゃん。布団まで貸してもらっちゃって」
「いいんだよ。あ、お洋服、洗濯しておいたから」
「あ、ありがと……」
何が何だか分からず、出た言葉はそれだけだった。
「目を覚ましてくれたし、取り敢えず身体拭こっか」
そう言って、小日向って名前らしい黒髪は、新しいタオルを水に浸した。
いまいち状況が飲み込めていないあたしは、されるがままに身体に付いた泥や寝汗を拭かれる事になってしまった。
本当に、こいつはなんで、初対面のあたしなんかに……。
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