第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第41話「どちらも思うは君のため」
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「私も、この鎧も不滅……。未来は無限に続いて行くのよ……」
光はネフシュタンの鎧を形成し、光が弾けるとフィーネは、クリスのものとは違い、金色に変化したネフシュタンの鎧に身を包んでいた。
「カ・ディンギルは完成しているも同然。もうあなたの力に固執する理由はないわ」
「カ・ディンギル……?そいつは──」
「あなたは知り過ぎてしまったわ。だからね、フフ、フフフ……」
ソロモンの杖がクリスへと向けられる。
次の瞬間、ノイズ達は変形してクリスの方へと突っ込んでいった。
「うわあっ!?うっ、く……ッ!」
慌てて部屋を飛び出し、廊下を走って逃げるクリス。
それをゆっくりと追いかけながら、フィーネは呟く。
「無駄に囀る鳥に価値はないわ。そのか細い喉を切り裂いて、二度と唱えなくしてあげる」
這う這うの体で足を進めるクリスだったが、館の玄関口を出た所で躓き、転んでしまう。
その直後、扉からフライトノイズが3体、空へと急上昇して行った。
運良く助かったものの、早く立ち上がらなければフィーネかノイズ、どちらかは確実に彼女の命を奪うだろう。
(本気で……フィーネはあたしの事を……)
背後から、加虐的な笑みを浮かべて迫るフィーネを見て、クリスはようやく気が付いた。
「……ちきしょう」
フィーネが自分の事を利用するためだけに、これまで『痛み』で自分を縛っていた事に。
「ちっくしょおおおぉぉぉぉッ!」
「それじゃあ、ごきげんよう」
ギアを纏う暇もなく、こちらを振り向き立ち上がろうとするクリス。
フィーネは容赦なく、躊躇いもなく……クリスへと鞭を振るおうとその手を振り上げた。
「ゼェェェェェェェェエエエヤッ!!」
その人物は眼鏡を外して胸ポケットに入れると、左拳を握って走り出した。
ノイズによって破壊された扉の向こう、廊下の奥から素早い足音が、気合いの掛け声とともに迫る。
振り返るフィーネ。その瞬間、彼女の顎に鈍い痛みが走った。
フィーネが腕を振り上げた時、反射的に両腕で顔を守っていたクリスだったが、その声に腕を下ろし……その目を見開いて驚いた。
「ジュン……くん……?」
そこに居たのは、不意打ちでフィーネに華麗なアッパーカットを決める純だった。
愛する人の命を狙う者へと、赤く燃えたぎる怒りを込めた拳を見舞う彼の左手首から上は、まるで体表に張り付いたような銀色の鎧に覆われていた。
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