第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第41話「どちらも思うは君のため」
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事で、ノイズの侵食を阻止する防護機能。更には、別世界に跨ったノイズの在り方を、インパクトによる固有振動にて調律。強制的にこちら側の世界の物理法則下に固着させ、位相差障壁を無効化する力こそシンフォギアの特性である。同時にそれが、人の扱えるシンフォギアの限界でもあった……)
自身のラボの机にもたれ、手元の珈琲カップをもてあそびながら、櫻井了子は思案していた。
(シンフォギアから開放されるエネルギーの負荷は、容赦なくシンフォギア装者の身体を蝕み、傷付けていく。その最たるものが"絶唱"……。人とシンフォギアを構成する聖遺物とに隔たりがある限り、負荷の軽減はおよそ見込めるものではないと、結論づけている。それが私の櫻井理論だ)
珈琲を一口啜り、研究室の壁にセロテープで貼り付けた写真を見る。
(この理を覆す可能性があるなら、それは立花響。そして風鳴翔。人と聖遺物の融合体第1号と第2号……。天羽奏と風鳴翼のライブ形式を模した起動実験で、オーディエンスから引き出され、更に引き上げられたゲインにより、ネフシュタンの起動は一応の成功を収めたのだが……立花響は、それに相当する完全聖遺物、デュランダルをただ1人の力で起動させる事に成功する……)
よく見れば研究室の壁中が写真だらけであり、その写真はいずれも響、そして翔のもので溢れていた。
日常風景から友人と過ごしている姿まで、いつの間に撮ったのか分からないものも多い。更には『見守り隊』が撮影した、翔と響の2人を中心に写したものも多く混ざっている。
更に部屋の隅には、広木防衛大臣の血痕が残るケースも置かれていた。
(人と聖遺物がひとつになる事で、さらなるパラダイム・シフトが引き起こされようとしているのは、疑うべくもないだろう。人がその身に負荷なく絶唱を口にし、聖遺物に秘められた力を自在に使いこなす事が出来るのであれば、それは遥けき過去に施されし“カストディアンの呪縛”から解き放たれた証……)
机のディスプレイに表示されているのは、響と翔のレントゲン写真だ。
二人とも心臓を中心に、聖遺物が肉体を侵食して癌細胞のように広がっているのがひと目でわかる。彼女はそれを知りながらも、誰にもそれを話さない。
彼女は自らの真の目的のため、融合症例の詳細を誰にも明かすつもりがないのだ。
(──真なる言の葉で語り合い、人類が自らの手で未来を築く時代の到来……。過去からの超越!)
櫻井了子を名乗る彼女は、その野望を次の段階へと進める為に動き出そうとしていた。
立花響と風鳴翔。2人のシンフォギア装者のデータと、起動したデュランダルを見て、誰にも知られること無くほくそ笑みながら……。
「……」
昼休みの食堂。未来は窓際の席で
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