第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第41話「どちらも思うは君のため」
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「た、ただいまー……」
鍵の空いた玄関から部屋へ入り、恐る恐る顔を覗かせる。
未来はとっくに着替えていて、不機嫌そうな顔で雑誌を眺めていた。
「ねえ、未来……。なんていうか、つまり、その……」
「おかえり」
「あ……うん、ただいま。……あの、入っても、いい……かな?」
「どうぞ。あなたの部屋でもあるんだから」
「うん……」
他人行儀な態度に、未来がとっても怒っているんだと実感させられる。
わたしがもう少し、話せるところは誤魔化さずに話していれば……。
「あ、あの……ね……」
「何?大体の事なら、あの人達に聞いたわ。今更聞くことなんてないと思うけど」
「……未来」
雑誌を閉じ、テーブルに置くと立ち上がって、わたしの方を見ながら叫んだ。
「嘘つきッ!どうしてわたしに黙ってたの!?わたしが毎晩どれだけ心配してたか分かってる!?」
「そっ、それは……」
「それに風鳴くんとの事だって、どうして隠してたの!?隠す必要なんて無かったでしょ!!」
未来の言葉が突き刺さる。わたしの事、こんなに心配してたのに……わたしはそれにも気付かずにいたなんて……。
「未来、聞いてほしいんだ。わたし──」
「どうせまた嘘つくんでしょ。わたし、もう寝るから」
そう言って未来は、二段ベッドの下の方……本当なら未来が眠っているべき場所のカーテンの奥へと入って行った。
カーテンの間から顔を覗かせると、未来は布団を被って壁の方を向いていた。
「……ごめん」
絞り出せたのは、ただその一言だけだった。
(……嘘つくつもりなんて、なかったのに。ただ、未来を巻き込みたくないだけだったのに……)
ふと、部屋の隅に置かれたピアノの上を見ると、中学の頃に2人で撮った写真が目に入った。
写真の中のわたし達は、満面の笑みで笑っている。
今までこんなに大きな喧嘩なんて、した事なんてなかったのに……。未来に危ない目に遭ってほしくなかったから、黙ってたのに……。
わたし、どうすればいいんだろう……。
(……ごめんね、響……本当にゴメン……)
口をついて出た言葉を、わたしは布団の中で後悔した。
風鳴くんとの事、ちゃんと向き合うって決めたのに……。響がノイズと戦っている事を黙っていたのも、わたしを危ない目に遭わせない為だって分かっているのに……。
それなのにわたしは……響の事、嘘つきだって言っちゃった。
風鳴くんの事も偽善者だなんて言って後悔したばっかりなのに……。
わたし……やっぱり、嫌な子だ。
そう思うと、わたしなんかが響みたいな優しい子の友達で、本当にいいのか……。そんな迷いが、私の中で渦巻き始めた。
(……装着した適合者の身体能力を引き上げると同時に、体表面をバリアコーティングする
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