第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第38節「撃ちてし止まむ運命のもとに」
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
二人に降り注ぐミサイルの雨、鉄矢の暴風。
地形を変えてしまうほどの銃弾とミサイルを撃ち続け、爆煙が周囲を包んで覆う。
息を切らしながら、先程までターゲットだった者達が立っていた場所を睨むクリス。
「はあ、はあ、はあ……ッ!どうだ……!これだけの弾丸を叩き込めば……ッ!!」
煙が晴れた瞬間、クリスの目に飛び込んできたのは、2人を守るようにそびえる、青いラインの入った銀色の壁だった。
「盾……?」
「剣だッ!」
見上げると、それは〈天ノ逆鱗〉を防御に応用し、剣の上に悠然と立つ蒼き剣姫……風鳴翼が立っていた。
「ふんッ、死に体でおねんねと聞いていたが、足手まといを庇いに来たか?」
「もう何も、失うものかと決めたのだ!大事な弟も、可愛い後輩も、2人まとめて私が守る!!」
翼は剣の上から、クリスを見下ろしながらそう宣言する。
『翼、無理はするな……』
「はい……」
弦十郎の自身を慮る声に、翼は静かに答える。
「姉さん……!?」
「翼さん……?」
剣の後ろから見上げる2人を見ながら、翼は言った。
「気付いたか、二人共。だが私も十全ではない……力を貸してほしい」
「当たり前だろ、姉さん!」
「はい!勿論です!」
ここに来て翼が加わり、更に戦況が逆転する。
範囲攻撃である〈千ノ落涙〉や、動きを封じる〈影縫い〉、中距離牽制攻撃の〈蒼ノ一閃〉などといった離れた距離の相手にも届く攻撃手段を持ち、更に実力は2人よりも高い世界最初のシンフォギア装者。
間合いを詰められれば、クリスの勝機は一気に傾いてしまう。
その上で、翼はクリスを倒すのではなく、無力化するつもりでここに立っていた。
響はクリスとも分かり合いたいと願っており、自分もネフシュタンの鎧やイチイバルの事について問い質さなくてはならない。
無論、翔は響を支える事と同時に、自分と同じ事を考えているだろうという事も、姉である彼女には理解出来ている。
やがてクリスが次の一手に出ようと銃口を向け、引き金を引く直前だった。
「もうやめるんだ!クリスちゃん!!」
戦場に突如響き渡る、5人目の声。
声の方向を一堂が振り向く中、翔と……そして、クリスが驚愕の表情を浮かべた。
「ッ!?お、お前……」
「純っ!?何でお前がここに──」
「ジュンくん……!?」
「「「ッ!?」」」
クリスの一言に翔、響、翼は揃って息を飲んだ。
戦場の只中で、まさかの再会を果たす2人。8年と数ヶ月の時を超えて、クリスが叫んだ憎しみの歌が、皮肉にも彼女の運命を引き寄せる事になったのである。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ