第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第36節「ヒーローの条件」
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に、この『愛してる』を!!
と、階段を登り続けていたその時、二課の通信機がアラートを鳴らす。
「ッ!こんな時に……」
足を止め回線を開くと、叔父さんの口から飛び出したのは予想外の人物だった。
『ネフシュタンの鎧の反応が、そちらに向かって接近している!今すぐ、指定のポイントに向かってくれ!』
「ネフシュタンの鎧!?って事は、あの子が!?……分かりました、すぐ向かいます!」
通信を切り、階段を降りようとしたその時だった。
「あ!翔くん!」
「おう、立花!」
聞き慣れた声に振り返り、顔を合わせる。
……が、先程意識してしまったせいか、俺の視点はそのまま止まる。
立花の方もまた、俺の方を見つめて立ち止まる。
見つめ合うこと何秒か、廊下を通って行った台車の音で、俺はようやく我を取り戻す。
「あっと、その……む、向かうぞ!」
「そっ、そうだね!行こう!」
タイミングは悪いが、しかしこっちも重要だ!
ネフシュタンの鎧の少女……二度あることは三度あるが、今度は四度目!次こそは必ず!
「立花!今度こそは絶対、あの子と……」
「うん……!今度こそ、絶対に……!」
その手を繋いでみせる!!
病院を駆け出して行く2人の少年少女を見て、彼は微笑む。
「千優さん、何かあったんですの?」
検査を終えた愛する人が、年齢を感じさない美しさを放つツインテールを揺らしながら、小首を傾げる。
「なに、ちょっと青春の手助けをしただけだよ」
「また人助け、ですか?いくつになっても、千優さんは変わりませんわね……。でもそれでこそ、わたくしにとってのヒーローですわ♪」
そう言って慧理那は、自分の腕を俺の腕に絡める。
出会った頃から全く変わっていない。いや、むしろ出会った頃よりも甘えん坊になっている。
でも、そんな彼女の事があの頃から変わらず、愛おしい。
「それで、今度はどんな人助けだったんです?話から察するに、学生の恋愛相談に乗ったとか?」
「ああ。それも聞いて驚くなよ?その子、なんとあの風鳴翼ちゃんの──」
待合室で語らう新婚夫婦を、窓から射し込む夕陽が照らす。
かつての2人と同じように、今、この夕陽の下を駆ける少年少女も、いつかはきっと……。
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