第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第34節「衝突する好意」
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。
そういえば、今日は特売があるんだっけ……。
でも、あんな事を言っちゃった後だから……こんなに沈んだ気分で買い物なんて……。
「はぁ……。わたし、もうどうすればいいのか、分からないよ……」
響……わたし、帰ったら響にどんな顔すればいいんだろう……?
「小日向さん?どうしたの、浮かない顔して」
「……え?」
顔を上げると、そこには見知った顔が立っていた。
陽の光を反射してきらめく綺麗な金髪に、宝石みたいな碧い瞳。
整った顔立ちに、シュッとした背筋。そして片手にはエコバッグ。
まるで、絵本の中から出て来た王子様のような雰囲気を持つ、誰が見てもイケメンだと答えるだろうと確信できる男の子。
「爽々波くん……」
「悩み事かい?……いや、その顔は間違いなく悩み事だね」
わたしの顔を、その海の底へと繋がっていそうな……見つめているだけで引き込まれそうな紺碧の瞳で見つめると、爽々波くんは確信したようにそう言った。
こういう察しのいいところが、彼の細やかな気遣いに繋がっている。
共学の高校なら、きっと校内で一番モテるんじゃないかな?
「どうかな?僕でよければ、相談に乗るよ」
「え?でも……」
「小日向さんには、いつもお世話になっているからね。この前教えてもらった味噌汁の隠し味も、親友から大絶賛されたし」
「わたしの方こそ、この前教えてくれたローストチキン、響も美味しいって言ってくれて……」
「小日向さんの親友の子、何作っても美味しく食べてくれるじゃないか」
「爽々波くんの方こそ、同じ部屋のお友達がどんな料理でも美味しいって言ってくれるんでしょ?」
お互いに顔を見合わせ、笑い合う。
買い出しで偶然知り合って、お互いの夕飯のレシピを教えあったりしているうちに、わたしと爽々波くんは仲良くなっていた。
どうやら爽々波くんの親友も、響と同じでよく食べる男の子らしい。
こうやって、お互いの親友の事や料理の話をしていると、楽しくてつい時間を忘れてしまう。
「それで、どうする?大丈夫そうなら、僕は行くけど……」
「……じゃあ、聞いてくれる?」
誰に相談すればいいのか分からなくて、迷っていた所に差し伸べられた手。
独りでグズグズ悩んでいるより、全部吐き出してしまった方が気が楽になるはずだし、きっといい解決方法が見つかるかもしれない。
だから、わたしは爽々波くんの……この屈託のない王子様スマイルを信じてみる事にした。
「それじゃあ立ち話もなんだし……。そこの店で、お茶でもしながら話そうか」
それからわたしは、爽々波くんの奢りでケーキセットをご馳走になりながら、事の顛末を話す事になった。
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