第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第33節「密かな不安」
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遥か遠くまで行ってしまっている。そんな気がしてしまうのは何故だろう?
ここ1ヵ月近くの響は、放課後になる度に何処かへ行っちゃうし、今朝も早くから修行とか言ってお昼まで戻らなかった。放課後、後をつけたら公園で筋トレしていたのを見た時は本当に驚いた。一体、何をしているんだろう……。
……風鳴翔。中学生の頃に同じクラスだった男子生徒。リディアンの3年生で、トップアーティストとして有名な翼さんの弟。
そして、響が苦しんでいるのを知っていながら、手を差し伸べてくれなかった卑怯な人……偽善者。
……ううん。本当は優しい人なんだって、頭の中では分かってる。そうじゃなきゃ、響があんな顔する筈ないもん。
昼間、電話に出た時の響の顔は……今まで見たことがない表情だった。
嬉しそうで、恥ずかしそうで……それでいて、とても楽しそうだった響の顔。
あの顔を見る限り、きっと響は──。
「……そういえば、この向かいの病院。翼さんが入院してるんだっけ?」
何気なく、本棚から窓の方へと視線を移す。
窓の向こう側、病室の窓の奥に見えた光景に、わたしは図書室を飛び出した。
(どうして、響が翼さんと一緒に……!?それに、一緒に居た青い髪の男の子は……!!)
見てはいけないものを見てしまったような気分になり、逃げるように走る。
行き先なんて分からない。ただ、ひたすら走り続けた。
わたし、どうしたらいいの……?
分からないよ……響……。
数分前、翼の病室にて。
「最初にこの部屋を見た時、わたし、翼さんが誘拐されちゃったんじゃないかって心配したんですよ!二課の皆が、どこかの国が陰謀を巡らせているかもしれないって言ってたし、翼さんは今、病み上がりですし!」
「も、もうその話はやめて!片付けもしなくていいから……私は、その、こういう所に気が回らなくて……」
驚く響、恥ずかしそうに顔を赤らめる翼。そして、翔は病室の有様に呆れていた。
病室内は、まるで強盗に荒らされたかのように散らかり放題になっている。
本や資料、新聞や週刊誌が床一面に散らばり、薬瓶や珈琲入りのカップはひっくり返っており、丸められたティッシュはゴミ箱に入っておらず、花瓶の花は枯れたまま。
おまけに、衣服どころか下着まで部屋中に散乱しているという始末だった。
「姉さん、緒川さんがいないとすぐにこれだよね……。立花、覚えておくといい。これが姉さんの数少ない欠点のひとつ、『片付けられない女』だから」
「も、もう!翔まで私を弄る事ないでしょう!」
「まったく……緒川さんから頼まれてるんだ。姉さんの部屋、片付けさせてもらうぞ」
数分後、俺と立花の手により、姉さんの病室は綺麗に片付けられた。
「それにしても、意外でした。翼
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