第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第33節「密かな不安」
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だけ」
「そう……。なら、いいんだけど……」
「それより早く行こうよ〜。すっかりお腹ペコペコだよ〜」
「……うん。行こう!おばちゃんのお好み焼き、楽しみだね」
そう言って2人は部屋を出る。おばちゃんが焼いてくれる、世界一のお好み焼きを食べるために。
……しかし、響は気が付かない。親友の表情が、すこし不安を滲ませていた事に。
二課の司令室に、いつもと違った黒い礼服の弦十郎が入室する。
ソファーに腰掛け、ネクタイを緩める弦十郎に了子が話しかけた。
「亡くなった広木防衛大臣の繰り上げ法要でしたもんね……」
「ああ。ぶつかる事もあったが、それも俺達を庇ってくれての事だ。心強い後ろ盾を、喪ってしまったな……。こちらの状況はどうなっている?」
弦十郎は顔を上げると、了子に基地の防衛システム強化の進行具合を尋ねる。
「予定よりプラス17パーセント〜♪」
「デュランダル輸送計画が頓挫して、正直安心しましたよ」
「そのついでに防衛システム、本部の強度アップまで行う事になるとは」
いつもの軽いノリで答える了子。何処かホッとした顔をする藤尭。
そして、防衛システム強化の進行をチェックしていた友里が振り返る。
「ここは設計段階から、限定解除でグレードアップしやすいように折り込んでいたの。随分昔から政府に提出してあったのよ?」
「でも確か、当たりの厳しい議員連に反対されていたと……」
「その反対派筆頭が、広木防衛大臣だった」
友里の疑問に答えながら、弦十郎はカップに珈琲を注いだ。
「非公開の存在に血税の大量投入や、無制限の超法規措置は許されないってな……」
溜息を一つ吐き、珈琲を一口飲んで弦十郎は続ける。
「大臣が反対していたのは、俺達に法令を遵守させることで、余計な横槍が入ってこないよう取り計らってくれていたからだ……」
「司令、広木防衛大臣の後任は?」
「副大臣がスライドだ。今回の本部改造計画を後押ししてくれた、立役者でもあるんだが……」
歯切れの悪い言葉に、友里も藤尭も首を傾げる。
「強調路線を強く唱える、親米派の防衛大臣誕生……つまりは、日本の国防政策に対し、米国政府の意向が通りやすくなったわけだ」
「まさか、防衛大臣暗殺の件にも米国政府が……?」
その時、基地の火災探知機のアラームが鳴り響く。
モニターに映し出された映像を見ると、どうやら改造工事中のブロックの1つで、機材が出火してしまったらしい。
「た〜いへん!トラブル発生みたい。ちょ〜っと見てきますわね」
「ああ」
そう言って了子は、飲みかけの珈琲が入った紙コップを置いて、火災が発生したブロックへと向かって行った。
……最近、響を遠く感じてしまう。
私の追いつけないどこか遠く……
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