第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第32節「兆しの行方は」
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。
「なんで分かるんですか?」
「君、風鳴翼の弟さんだろ?新聞で見た事あるよ」
その人は少し声を潜めると、ニカッと歯を見せて笑った。
ああ、そうか……自分がそこそこメディアに露出する人間だった事を思い出し、苦笑いする。
姉さんほど定期的に載るわけじゃないから、あんまり騒がれないだけなんだよなぁ。通行人とすれ違ったら、ヒソヒソと盛り上がり始めた……という事はちょくちょくあるけど。
「さしずめ、入院中のお姉さんに、単なる人気スイーツというだけでなく見舞い品としての価値も高い、この店のフルーツゼリーを食べさせてあげようと走って来た……とか?」
「ほ、殆ど合ってる……。あなた、一体?」
「なに、初歩的な事だよ。そら、これは君のものだ。お姉さんが早く元気になれるよう、俺も祈っているよ」
そう言ってその人は、店の奥へと歩き去ってしまった。
なんか、かっこいい人だったな……。店の奥でケーキを選んでいる、綺麗な金髪をツインテールに結んだ彼女らしき人の隣に並ぶ後ろ姿が、見ていてとても微笑ましく感じる。
お礼を言いたいけど、邪魔しちゃ悪いだろうな。また今度、ここに来た時に会えるといいんだけど。
「お会計お願いしまーす」
そう思いながら、レジの店員さんにゼリーの会計を頼み、財布を取り出す。
ゼリーの味はみかん。……奏さんと同じ色だなぁ、なんて思ってしまったけど、それも含めて姉さんが元気になるなら、それでいいと思う。
「へ……へくしゅっ!」
その時、急に鼻がムズムズして来たので慌てて口を腕で抑える。
くしゃみか……誰かに噂でもされているのだろうか?
「……なるほど。つまり響くんは、翔の事を異性として好きだというわけか?」
「うう……そう簡単に言葉にして聞き返さないでくださいよ師匠ぉ……。相談してるわたし自身も恥ずかしいんですから……」
顔が熱くなってるのが分かる。こうして言葉にすると、やっぱり恥ずかし過ぎて爆発しちゃいそう……。
「ふむ、しかし恋愛相談か……。生憎と、俺はその手の話だけは経験が無くてな……」
「ええ?師匠、恋愛経験ないんですか!?」
「ああ。あったら今頃、俺は独り身じゃなくなってる筈だろ?」
言われてみれば確かにそうだ。うーん、師匠ならモテると思うんだけどなぁ。
了子さんとか、絶対お似合いなのに……師匠と了子さん、お互いに名前で呼びあってるし。
「そうだな……。よし、響くん。迷える君にこの言葉を送ろう」
「ッ!はい、なんでしょう……?」
気を引き締めて、師匠からの言葉を待つ。
師匠はいつもの穏やかな顔で、諭す様に言った。
「相手と対峙した時、振るうべき正しい拳というものは、己と向き合い対話した結果導かれるものだという」
「……えっと、つまり?」
「
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