第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第32節「兆しの行方は」
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…、はあ……師匠ッ!まだです!続きをお願いしますッ!」
「響くん……。よし分かった!次はシミュレータに行くぞ!」
「はいッ!……ところで師匠、今日は翔くんの姿が見えませんが……」
響の疑問に弦十郎は、ああ、と思い出したように答えた。
「翔なら、ランニングのついでに、翼への見舞い品を買いに行っている。なんでも、すぐに売り切れてしまうくらい美味いフルーツゼリーがあるとか……」
「そう、ですか……」
「……何か、悩み事か?」
「えっ!?いっ、いえ、別にっ……!」
図星を突かれ、響は一瞬動揺しながらも平静を保とうとする。
今、彼女の中で渦巻いているもの。それは昨日の夜、自覚したばかりの恋心。
こればっかりは翔本人に相談するわけにもいかない。かと言って、誰に相談すればいいのかも分からず、響は悩み続けていた。
「なんなら、俺が相談に乗ってやろう」
「えっ、師匠がですか!?」
「おいおい、俺は君の師匠なんだぞ?それに、君より大人だからな。人生経験なら、君や翔の何倍もある。大抵の悩みなら、助けになるかもしれんぞ?」
そう言われ、響は考える。困った時は、大人に頼るのが一番だ。
特に、尊敬する師匠である弦十郎であれば、相談相手として不足はないだろう。
そう考えた響は周囲を見回し、翔が帰って来ていない事を確認してから、打ち明けた。
「翔くんには絶対、内緒ですよ?」
「ん?ああ、勿論だとも。あいつに言えない悩みなのか?」
「はい、実は……」
「見つけた……最後の一個!」
息を切らして入店した洋菓子店のレジ前。その小さなテーブルの上に並べられていた容器の山は既になく、残るは最後の一つだけだった。
姉さんのお見舞いに持っていこうと決めた、1日30個限定フルーツゼリー。
みかん、ぶどう、マンゴー、ピーチ、リンゴの5種類の味があり、使用されているフルーツはどれも、届いたばかりの新鮮な一級品……。
女性人気が高いだけでなく発売以来、お見舞い品としても重宝されている商品らしい。
「ラッキーだ。あとはあれをレジに持っていけば……」
机に近づこうとした時、その希望は目の前で摘み取られた。
客の1人が、俺より一歩先にその最後のゼリーを手に取ってしまったのだ。
「ッ!」
「ん?……少年、もしかしてこれ欲しいのか?」
ゼリーを手に取ったお客さん……ツンツンした黒髪で、黒地に白い線で龍が描かれたTシャツとジーンズを着た男性がそう聞いてくる。
「いえ……先に取ったのはそちらですし……」
「いいよ。俺は別にお見舞いってわけじゃないし。美味しそうだったから、買いに来ただけさ。でも、君は多分お見舞いに持ってくために、このゼリーを探してたんだろう?」
そう言って、その人は俺に最後のゼリーを手渡す
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