第3楽章〜不滅の聖剣・デュランダル〜
第30節「デュランダル、起動」
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
取り上げようと柄に触れたその瞬間だった。
「うッ……ああっ……あああああああああああああ!!」
デュランダルを握った手から、強い力が流れ込み、胸の奥から抗えない程の衝動が全身を駆け巡る。
ギアの内側から外へと溢れ出そうとする、ドス黒い力……これ、前にも……。
灰色のギアが両腕から、どんどん赤黒く染っていく。胸の水晶体が、血のような紅へと変わる。
意識が真っ黒に塗り潰されて……やがて、深淵へと……落ちて……。
ダメ、だ……俺は……僕は……。
絶対に、何がなんでも……必ず……。
たちばな、の……手……を……。
「うあああああああああああああああああああッ!!」
「があああああああああああああああああああッ!!」
二乗された唸り声が、工場一帯に響き渡る。
目の前に獣は2匹。理性を失った橙と、深淵へと引きずり込まれた灰色。
共鳴する唸り声と共に、2人はその手に握った聖剣を力任せに振り下ろした。
「お前を連れ帰って……あたしはッ……!」
鎧の少女は撤退を選び、黄金の光に包まれてゆく工場を後目に飛び去る。
光の柱は縦一文字に、眼前に聳える工場の煙突をバターのように容易く斬り裂いて、眼前のノイズを直撃ではなくその余波で、炭すら残さずに消し飛ばした。
振り下ろされた光の柱の動きが止まる。
このまま振り下ろされれば、工場の中心部に集まった燃料タンクを破壊し、工場はそのまま吹き飛ばされる……筈だった。
その直前の、ギリギリのところでデュランダルの刃は止まっている。
了子は聖剣を握る2人の方を見て、目を凝らす。
工場全てを照らす閃光の先。その光源を握り締めている2人の姿を確認するのに、少しかかったが……やがて、彼女はデュランダルが止まった理由をその目で確かめた。
聖剣を握る2人の装者。その剣を振るった少女ではなく、手を添えていた少年の腕が小刻みに震えている。
「……タチ……バ……な……」
未だ2人の顔は黒い影に覆われ、赤く爛々と光る眼と、食いしばった牙もそのままだ。
しかし、少年の右目だけは鋭い青を放ち、隣に立つ少女の顔を真っ直ぐに見つめていた。
やがて、聖剣の輝きが弱まり、光の刃は消滅する。
剣は力を眠らせ、力尽きた担い手はその手をだらりと下げた。
手放され、地面に落ちる黄金剣。
自らを支配していた影から解放された少女は、糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
……暗がりの中から引き上げようと手を伸ばし、共に深淵へと沈んでなお、彼女の傍に在ろうとした少年の、優しい腕の中に抱かれながら。
(これがデュランダル……)
了子は響の手を離れ、地面に転がる黄金の聖剣を見つめる。
もう一歩手遅れだったら、この工
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ