第7章:神界大戦
第224話「宿りし“天使”」
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事が出来ると“天使”は言う。
「……悪影響、ね」
「もしあまり乖離していなければ、魂及び存在が欠けた状態になります」
「……そうなると、寿命への影響はもちろん、欠けた分だけその体は弱ってしまいます。記憶や精神にも影響が出るかもしれません」
魂を二つに分けるのは、本来一つなものを無理矢理分ける行為そのものだ。
クッキー一枚を割って二つにすると一つ当たりの量が減るように、魂を二つに分けるのにも相応のリスクを背負う。
「私達が目指す安全な分離は、人で言う細胞分裂に近いです」
「私達と貴女達が乖離していくに連れ、既に分離は始まっています。無理に分ける場合と違うのは、同時にお互いの魂を補填している点ですね」
「……?」
最早概念的な話になってきたためか、なのはが首を傾げる。
黙っている奏も、半分程しか理解出来ていなかった。
「……理屈は無視してください。本当に、要は細胞分裂に似た形で分離すれば何も問題はないと言う事ですので」
「……そう」
見かねてか、奏に宿っている方の“天使”が簡潔に纏める。
規模や詳細は全く違うが、とりあえずそれに近いものとして二人は認識する。
「……話を戻しましょう」
「と、言っても話すべき事は粗方話し終えましたが」
閑話休題。会話の軌道修正を行う“天使”。
しかしながら、本題も粗方話し終えていた。
「……決戦の時はそう遠くありません。努々、精進する事をお忘れなきよう……」
「全ては貴女達、人の“可能性”に懸かっています」
一拍置いて、威圧すら感じる真剣な目で、“天使”は言う。
「決、戦……?」
「はい。……決着は、まだついていません」
確かに、まだ何もかも諦める訳にはいかない。
だが、それ以上に“敗北”の二文字が司達には刻まれていた。
奏となのはも同じで、故にまだ戦いが続いているという言葉に引っかかった。
「託されたはずです。……希望を、“可能性”を」
「人の持つ“可能性”は、まだ尽きていません」
「あ……」
思い出すのは、神界を脱出する時の事。
あの時、確かに奏達は優輝に後を託された。
「………」
「……敗北の経験が身に沁みついてしまっているようですね」
それでも、前に踏み出せない。
敗走した経験が、足枷となって二人を引き留めていた。
「一度安全な場所まで退避した事で、より深く理解してしまったのですね。……神界の規格外さを、絶望的な戦力差を」
「ぅ………」
要はトラウマになっているのだ。
神界から脱出するその瞬間まで、決して諦めない覚悟と意志を持っていたなのはも、“もう二度と経験したくない”と思ってしまっている。
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