第2楽章〜約束の流れ星〜
第24節「言えない秘密と始まる特訓」
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「響?」
屋上のベンチに座り、一人で考え込んでいると、やって来た未来に声をかけられた。
「未来……」
「最近、1人でいる事が多いんじゃない?」
未来はこっちに歩いて来ながら、そう聞いてきた。
「そ、そうかな?そうでもないよ?わたし、1人じゃなんにも出来ないし、この学校だって未来が進学するから──」
隣に座った未来に、手を握られる。
「だって響、無理してるんでしょ?」
未来の言葉は図星だった。あーあ、やっぱりわたし、隠し事向いてないみたい。
「……やっぱり未来には敵わないや」
「もしかして、翔くんと何かあった?」
「そっ、そんな事ないよ!これは翔くんの事とは関係なくて……」
そこでちょっとだけ、言い淀んでしまう。
これは、翔くんの事と全く無関係じゃないから。ちょっとだけ、嘘を吐いている気がして……。
ふと昨日、翔くんから言われた事を思い出した。
『立花、小日向とは上手くいっているか?』
ミーティングの後、翔くんは藪から棒にそんな事を聞いてきた。
喧嘩はしていない。でも、隠し事を続けないといけないのは辛い。
そう言ったら、翔くんは少し考え込む素振りを見せて、それからこう言った。
『嘘を吐くのは辛い。それが傷付けるためのものではなく、大切な人を守る為の優しい嘘なら尚更だ。だから、隠し続けるのが辛い時は、嘘の中に少しだけ真実を混ぜる事も必要になってくる』
嘘の中に少しだけ……?
首を傾げると、翔くんは優しく微笑みながら続けた。
『人を騙す方法の一つに、「真実8割、嘘2割」って配分があってな。人を騙すのにも100%の真っ赤な嘘じゃ、当然だけどボロが出る。でも、本当の話をした中に少しだけ嘘を混ぜるだけで、その嘘は現実味を帯びてくるんだ』
言ってること全然分かりません、と言ったら翔くんはまた少し考え込んでから、つまり、と言った。
『これ、人を騙す為だけじゃなくて、人を守る為の嘘にも使えると思うんだ。隠さないといけない大事な部分は嘘で隠すとして、それ以外の所はちゃんと本当の事を話す。そうすれば、全部隠してるよりは少しだけ気が楽だと思うぞ?……まあ、嘘を吐くのが苦手そうな君に言っても、役に立つかは分からないが……』
困ったような顔でそう付け足す翔くんに、一言多いよ〜、と頬を膨らませる。
でも、翔くんの優しくアドバイスは、わたしの心にしっかりと染みていた。
「未来……ちょっとだけ、相談してもいいかな……?」
「うん……いいよ?」
このまま隠し続けても、未来を心配させるだけだ。
だからわたしは、ちょっとだけ話してみる事にした。
どこまで隠せるかは自信ないけど……でも、未来のためだもん!
「わたしね……強くならなくちゃ、いけないんだ……」
「強く?
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