暁 〜小説投稿サイト〜
戦姫絶唱シンフォギア〜響き交わる伴装者〜
第2楽章〜約束の流れ星〜
第23節「防人の絶唱(うた)」
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それが、風鳴翼の生き方なんです」
 
「そんなの……酷すぎます……」
 立花の頬を涙がつたう。小さく嗚咽しながら泣き始めた立花の右肩に、俺はそっと手を置いた。
「そして私は翼さんの事を何も知らずに、一緒に戦いたいなんて……奏さんの代わりになるだなんて……」
「僕も、あなたに奏さんの代わりになってもらいたいだなんて思っていません。誰も、そんな事は望んでいません」
「緒川さんの言う通りだ。立花は立花だろ?」
 そう言うと、立花はハッとしたように顔を上げた。
 それを見てから、俺は更に続ける。
「奏さんの立場は奏さんだけのものだ。だったら、立花は立花だ。姉さんの後輩、"立花響"として姉さんを支えてくれればいいんだよ」
「私は……私として……」
「そうそう。それだけは絶対、他の誰でもない"立花響"にしか出来ない事なんだからな」
 自然と零れた微笑みと共に、肩に置いた手で立花の頭を撫でる。
 汗で少しだけベトッとしていたけど、頬に触れた時と同じ柔らかい感触が掌に伝わった。
 それを見ていた緒川さんは優しげに微笑むと、立花へと向けて言った。
「ねえ響さん、僕からのお願いを聞いてくれますか?」
「……え?」
「これから先も、翼さんの事を好きでいてあげてください。翼さんを、世界でひとりぼっちになんてさせないで下さい」
 そう言った緒川さんの目は、とても優しくて……心の底から姉さんの事を慮ってくれているのが伝わった。
「俺からもよろしく頼む……。姉さん、不器用だから友達少なくてさ。これからも仲良くしてくれると嬉しい……」
 俺も緒川さんと一緒に立花を見つめる。それを聞いて、立花は静かに頷いた。
「はい……」
 
 
 
 どこまでも、どこまでも、下へ下へと落ちていく空の中で。
 
 ふと、懐かしい姿とすれ違った気がして目を開く。
 
 目を開いて身体を縦に直すと、視線の先には……
 
 あの頃と変わらない奏の後ろ姿があった。
 
 こちらを振り返った奏の顔は、どこか哀しげに私を見つめる。
 
 そんな顔はしないでほしい。私は奏に向かって叫んだ。
 
「片翼でも飛んでみせる!どこまででも飛んでみせる!だから笑ってよ、奏……」
 
 いつの間にか空は海の中へと変わっていて、私の意識は深い奈落の底へと落ちていく。
 
 最後に映った奏の顔は、振り向いた時よりも哀しそうに……無言で何かを伝えようと、私を見つめ続けていた……。
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