第2楽章〜約束の流れ星〜
第23節「防人の絶唱(うた)」
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ぞろぞろと病院の外へ出ていく、調査部の黒服職員達。
それを見送ると、俺は待合室のソファーに座って俯いている立花の左隣に腰を下ろした。
「……立花のせいじゃないさ。俺だってあの場にいながら、何も出来なかった……」
「……でも、私がもっと強ければ、翼さんは……」
……ダメだ。励まそうにも、いい言葉が浮かばない。
立花だけじゃない。俺も立花と同じ事を考えてしまうからだ。
姉さんが絶唱を唄う事を防げなかった。それは、俺の不甲斐なさでもある。
そう考えると、何も言えなくなってしまう……。
「……二人が気に病む必要はありませんよ。命に別状はありませんでしたし、絶唱は翼さんが自ら望み、唄ったのですから」
突然耳に飛び込む第三者の声に、俺達は顔を上げる。
「緒川さん……」
そこには、端末を自販機にかざして飲み物を購入する緒川さんがいた。
「翔くん、少し昔話をしようと思うんだけど、いいかな?」
「……お願いします」
俺だけじゃ立花を励ませない。ここは緒川さんの助け舟に乗るとしよう。
そう思い、俺は緒川さんに話してもらうことにした。
姉さんの心の支えにして、無二のパートナー。俺にとっては、もう一人の姉のような存在だった人。
先代ガングニール装者、天羽奏
あもうかなで
さんの話を……。
「……響さんもご存知とは思いますが、以前の翼さんはアーティストユニットを組んでいました」
「ツヴァイウィング、ですよね……」
「その時のパートナーが天羽奏さん。今はあなたの胸に残る、ガングニールのシンフォギア装者でした。2年前のあの日、奏さんはノイズに襲撃されたライブの被害を最小限に抑えるために、絶唱を解き放ったんです……」
「絶唱……翼さんも言っていた……」
「シンフォギア装者への負荷を厭わず、シンフォギアの力を限界以上に解き放つ絶唱は、ノイズの大群を一気に殲滅せしめましたが、同時に奏さんの命を燃やし尽くしました……」
「それは、私を救うためですか……?」
緒川さんは何も答えない。その沈黙は、立花の質問を敢えて否定も肯定もしない、正しい答えだったと思う。
湯気を立てる珈琲を一口飲み、緒川さんは話を続ける。
「奏さんの殉職。そして、ツヴァイウィングは解散。独りになった翼さんは、奏さんの抜けた穴を埋めるべく、がむしゃらに戦ってきました……」
絶唱を解き放つ直前の、姉さんの言葉を思い出す。
『防人の生き様……覚悟を見せてあげるッ!その胸に、焼き付けなさい……』
きっと奏さんが生きていれば、姉さんもあんな真似はしなかっただろう。
そう思うと、やっぱり奏さんの死が悔やまれる……。
「……不器用ですよね。同じ世代の女の子が知ってしかるべき恋愛も遊びも覚えず、ただ剣として戦ってきたんです。でも
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ