第2楽章〜約束の流れ星〜
第23節「防人の絶唱(うた)」
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……ああッ……!うぐっ……がっ……ううっ……!」
全身を鋭い痛みが駆け抜ける。ネフシュタンの鎧に備わった自己再生能力だ。破損した箇所を再生しようとして、装着してるあたしの身体を破片が侵食しようとしている痛みが、全身のあちこちから突き刺してくる。
(ぐっ──クソッ……ネフシュタンの侵食が……ッ!この借りは……必ず返すッ!)
侵食の痛みに耐えて立ち上がると、空高く跳躍する。
おそらく奴らは追って来られないだろう。だったら今は、フィーネの所に戻った方がいい。
この破片を取り除いてもらったら、すぐにリベンジしてやる!!
この時のあたしは、何も分かっていなかった。
フィーネの本当の狙いも、あたし自身の本当の気持ちも。
そして……あたしの帰りを待ってくれている、優しい人がいる事も……。
絶唱の余波で抉れた地面。その真ん中に、姉さんは独りで立っていた。
ダチョウノイズの粘液はノイズごと消し飛んでおり、俺と立花は急ぎ、姉さんの方へと走る。
「姉さん!!」
「翼さーーーん!!翼さ……うわっ!!」
「立花!」
つまづいて転びそうになった立花を、何とか支える。
そこへ、急ブレーキを踏む音と共に、二課の黒い自動車が停車する。
「無事かッ!翼ッ!!」
ドアを開けて出て来たのは、叔父さんと了子さん。
二人とも険しい表情で姉さんの方を見ている。
「私とて、人類守護の使命を果たす防人……」
俺達の視線が集まる中、姉さんはゆっくりと振り返った。
ヒビ割れ、破損したギア。足元には真っ赤な血溜まり。
そして何よりショックだったのは……。
「こんな所で、折れる剣じゃありません……」
両眼と口から血を流し、瞳孔の開いた虚ろな目をした姉さんの顔だった。
そして、姉さんはそのまま糸の切れたマリオネットのように、力なく地面へと倒れる。
倒れる瞬間、俺は慌てて駆け出し、ボロボロになった姉さんの身体を抱き留めた。
「姉さん……姉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「あ……あ、あ……翼さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
白い月が照らす夜空に、俺と立花の叫び声だけが、静かに吸い込まれて行った。
「辛うじて一命は取り留めました。ですが、容態が安定するまでは絶対安静。予断の許されない状況です」
「よろしくお願いします」
リディアン音楽院のすぐ隣にある病院の廊下。オペを担当するドクターに、叔父さんと黒服さん達が頭を下げる。
無論、俺もその隣で静かに頭を下げていた。
やがて頭を上げると、いつものワイシャツの上からスーツを着た叔父さんは、黒服さん達へと向き直り、指令を下す。
「俺達は、鎧の行方を追跡する。どんな手がかりも見落とすな!」
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