第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第17節「笑顔で囲む食卓」
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「あはは……これはどうも」
サングラスが顔からずり落ちそうになっている姉さんと、姉さんを羽交い締めにして取り押さえている緒川さんだった。
数分後。ふらわーのカウンター席には左から順に立花、俺、姉さん、緒川さんが並んで座っていた。
姉さんと緒川さんの前には、立花が勧めてくれたお好み焼きが湯気を立てている。
一体どうして、店の外でコソコソしていたのかと聞いても、姉さんはそっぽを向くだけで答えてくれない。
緒川さんに目をやると、こちらもただ愛想笑いで濁すだけだった。
状況としては、企画していた食事会が前倒しになった形だが、これはこれで都合がよかったかもしれない。
ただ、先程から姉さんはずっと黙りこくったままだ。空気が重いというか、少し気まずい。立花も先日の件以来、姉さんと上手く喋れず萎縮してしまい、居心地が悪そうだ。
俺がなんとかしなければ……。
「姉さん、お昼まだなんでしょ?ほら、早く食べないと冷めちゃうよ?」
「そうだな……。それでは店主の女将さんに失礼だ。ありがたく頂こう」
割り箸を綺麗に真っ二つに割って、姉さんがお好み焼きに手を付ける。
それを待ってから、緒川さんも自分の分に手を付け始めた。
「「いただきます」」
眉間に皺を寄せながら、箸で摘んだ生地を一切れ。
咀嚼するうち、姉さんの表情がみるみるうちに和らいで行った。
「こ、これは……何たる美味!!」
「この味と食感、チェーン店では味わえませんよ!」
緒川さんも目を輝かせて次のひと口へと手を伸ばす。
だが、それ以上に姉さんだ。ひと口、またひと口と箸を動かす手が早くなっていく。
食べる度に姉さんの顔には、少しずつ明るさが戻って行った。
いつだったか、ライブの後の奏さんが言っていた気がする。
思いっきり歌うとすっげぇ腹減るらしい、と。
また、空腹は人の心を荒ませる。満腹は人の心を柔らかくする、とも聞いた事がある。
では、今の姉さんに当てはめてみるとどうだろうか?
見事にドンピシャだ。自分を追い込み、鍛錬と任務でも一人きり。その上常に気を張りつめていたら、そりゃあストレスが溜まって行く。
でも今、姉さんはこうして美味しいものを食べる事で、そのストレスを発散しているのだ。ここ数日、余計なくらいにすり減らし続けた精神的なカロリーを補うかのように。
「すみません……お代わり、頂けますか?」
「はいよ」
おばさんは、姉さんの食べっぷりに少々驚いたような顔をして。でも、その表情を見ると満足気な表情を見せ、次の生地を広げ始めた。
「立花、今なら行けるだろ?」
「うん、そうだね……」
立花は席を立つと、姉さんの方まで歩み寄る。
「あの、翼さん……」
「立花?」
「その……この
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