第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第17節「笑顔で囲む食卓」
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なる食に対して、それ以外の言葉は不要だ。
半分ほど食べ進めた辺りで視線を感じて振り向くと、立花が何やら物欲しそうな目でこちらをじっと見つめていた。
視線の先を辿れば、そこにはまだ半分ほど残っている俺の皿が……。
「立花……もしかして、食べてみたいのか?」
「くれるの!?」
「別に構わないが……君の事だ。この店のメニューは食べ尽くしているんじゃないのか?」
「いやー、翔くんがあんまり美味しそうに食べてるもんだから、見てたらそっちも食べたくなって来ちゃって」
そんな風に言われると悪い気はしない。まだ半分も残っているんだ。お裾分けするくらい何でもないさ。
そう思い、中の具があまり抜け落ちないように気をつけながら切り分けると、立花はこちらに向けて「あ〜ん」と口を開けた。
君は餌を待つ雛鳥か、とツッコミつつも、切り分けたお好み焼きを箸で運び、彼女の口へと滑り込ませる。
立花はそれを何度か咀嚼すると、ぱぁっと華が開くような笑顔で言った。
「ん〜〜♪美味し〜い♪」
「それはよかったな。でも口角、ソースついたままだぞ?」
「え?嘘!?どっち!?」
「慌てるな、落ち着け、制服の袖で拭こうとするんじゃない!ほらナプキンだ。右端の方に付いてるから、しっかり拭き取るといい」
立花が紙ナプキンを受け取り、口を拭くその一瞬の間に何やら表の方から物音が聞こえた気がするが……振り向いても店の表には何も見えない。気の所為だろう。
「しかし、こうなると立花が食べてる方も食べてみたくなるな。スタンダードな豚玉のはずなのに特製、と銘打たれている所が興味をそそる」
「え?食べる?」
「じゃあ、一口もらおうか」
俺がそう言うと、立花は自分のお好み焼きを切り分ける。
「はい、あ〜ん」
「んぁ……」
条件反射で口を開けると、直ぐに生地とキャベツのホクホクとした熱が口の中に広がった。
「はふはふ……」
「大丈夫?やっぱり熱かった?」
「ひあ
いや
……ん、こりゃ美味い!」
「でっしょ〜!ふらわーのお好み焼きは世界一なんだから!」
「そう言って貰えると嬉しいねぇ」
店主のおばさんが、やたらニヤニヤしながらこちらを向く。
確かに、工程がシンプルでもこの味は俺も初めてだ。
おそらくこのソース……これが生地とキャベツ、玉ねぎ、豚肉、それぞれの味と食感、その全てを引き立たせる働きを担っているんだろう。
一体何を材料にしているのか……。
ドンガラガラズッドン!
と、ソースの分析を始めようとしたその時だった。
店の表から、今度はハッキリと物音が聞こえた。
「おや?猫がゴミ箱でもひっくり返したのかね?」
おばさんが店の戸を引くと、そこに居たのは……。
「あ……どうも、こんにちは……」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ