第1楽章〜覚醒の伴装者〜
番外記録(メモリア)・夕陽に染まる教室
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……ごめんね」
「いや、別に謝る事じゃないよ。ただ、少しだけ嬉しく……いや、それよりもこっちの方が大事だね」
翔はバケツを床に置くと、洗剤を溶かした水にスカッチを浸して手に持った。
「手伝うよ」
「いや、でも……」
「校内の備品は綺麗に使え。それが校則だし、清掃委員として見過ごせないんだよ」
その程度の校則も守れなくなる空気感など馬鹿げている。
内心でこのクラスの生徒らを毒づきながら、翔は響の机を磨き始めた。
「なんだか、ごめんね……」
「立花さんが謝る事じゃないよ。こういうのは汚した側が悪いんだ」
「でも、私と一緒に居るところ見られちゃったら、君も呪われちゃうかも……」
呪い。この頃から、それは彼女の口癖だ。
嫌な事、凹む事、落ち込む事、ドジを踏んだ事。そういったよくない事に苛まれる度に、彼女はそう呟く。『私、呪われてるかも』と。
「呪い……か。確かに、あの事件以来この学校を取り囲む空気は、もはや呪いの類だよな……」
何も非科学的なものでは無い。オカルティックなものでないとしても、人の心の暗黒面がそれを実現してしまう事は、よくある話なのだ。
「でも、僕から見れば立花さんのそれも一種の呪いに見えるぞ?」
「それ、って?」
「さっきから無心に呟き続けてる言葉。ずっと繰り返してる時点で、大丈夫なわけないだろう?それ、何かのおまじないだったりするの?」
「あー、ひょっとして"へいき、へっちゃら"?」
首を傾げる響に翔は頷きつつ、一瞬呆れたような顔になる。
何故そうまでして強がれるのか。彼には理解出来なかったからだ。
無意識だとすればこの言葉こそ、彼女を縛る呪いではないか?
そうとさえ考えるほど、彼にはそれが強がりに見えたのだ。
「この言葉はね、魔法の呪文なんだ。どんなに辛くても、挫けそうな時でも頑張れる。勇気をくれるおまじない。だから、私は何があっても頑張れるんだ」
「そうか……。ごめん、そんなに大事な言葉だとは知らずに……」
「いいっていいって!それより、また未来に心配かけちゃうから急いで片付けなきゃ!」
再び響が机を拭き始める。
それきり、翔は何も話しかけられなかった。
きっとその言葉には、特別な何かがある。彼女の様子からそう感じた彼は、その言葉を勝手に強がりだと思い込み、呪いだなどと言った自分が許せなかった。
危うく彼女の支えを折りかけたのではないか。そう思うと、自分も他の生徒らと変わらない、自分を中庸だと宣う蒙昧な人間だと実感し、嫌気がさしたのだ。
それから間もなく、その机は油性ペンの跡は全く残らない、ピカピカの机になっていた。
ついでにビニール紐で雑誌を縛り、翔はバケツと雑誌を手に立ち上がる。
「じゃあ、僕はこれで」
「片方持とうか?」
「片付
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