暁 〜小説投稿サイト〜
戦姫絶唱シンフォギア〜響き交わる伴装者〜
第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第9節「任務前夜」
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》には……勇気がなかったんだ……。足が震えて……声が出なくて……飛び出せなくて……。手を差し伸べられるチャンスはいくらでもあった!なのに、僕は!!」
 僕は何も出来なかった……。泣いている誰かに手を差し伸べるヒーローには、なれなかったんだ……。
 
「……翔くん」
「許してくれなくてもいい……。君に怒られても、恨まれても構わない!嫌われたって仕方ないって分かってる!でも……あの日の事を謝らせて欲しい……。僕の弱さが君を傷付けた事を謝罪させて──」
「翔くん!顔を上げてよ!」
 立花の叫びに、ゆっくりと顔を上げる。
 視界に映りこんだ立花の顔は、ぼやけてよく見えなかった。
 そこで、ようやく自分が泣いていたことに気がつく。
 
 制服の袖で涙を拭うと、立花は穏やかな顔でしゃがみ込んでいた。
「私、翔くんの事を恨んだ事なんて一度もないよ?」
「え……?」
 僕の事を……恨んでない?
 なんで……僕は、君に手を伸ばさなかった臆病者なんだぞ?
「翔くんの感じた怖さは、人間として当然のものだと思う。誰だって怖いに決まってるよ」
「でも……僕は……」
「それにね。翔くんが私の事心配してくれてたって知った時、すっごく嬉しかった」
 嬉しかった……?
 なんで、そんな事を……?
「だって、あの教室で私はひとりぼっちじゃなかったんだって、翔くんが教えてくれたから私は頑張れたんだよ?」
「僕が……?」
 何の話を……。そう言いかけて、思い出した。
 そういえば、立花に直接話しかけたのはあの日の放課後と……もう一つあったんだ。
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