第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第4節「臆病者の烙印」
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で、机への落書きから持ち物隠し、足掛け、席離し、靴に画鋲、下駄箱にゴミ……。
一度だけ、給食を床にぶちまけられた事だってあった。流石に掃除に支障が出たので、それ以降は無かったが。
生徒達以上に腹が立ったのは、頼みの綱の担任でさえ立花を見放した事だ。自分も周囲から迫害されるのが怖かった、というのは安易に想像がつく。それでも、教師として果たすべき役目はしっかりと果たして欲しかった。
多分担任は、俺が生涯見た中で一番汚い大人にランクインしたと思う。
立花を迫害したのは学校だけじゃない。自宅には毎日のように、机に書かれたものと同じような文面の貼り紙を貼られ、窓からは石を投げ込まれたらしい。
自宅と会社、両方から受けたあまりの差別に耐えかね、立花の父親は失踪したとも聞いている。
母親と祖母、そして幼馴染の親友。味方は少なからずいたとはいえ、まるで世界の全てが彼女の敵に回ったかのような、酷い有様だった。
それも、これが立花だけでなく、同じ目に遭っていた人達が日本中にいた事を考えると、俺の内側からは怒りが溢れてくる。
馬鹿げている。
何故、自分の見知った誰かが生き延びた事を喜ばない?
どうして生き延びた事を理由に迫害する?
そして……なんでそんなに生命の価値を決めたがるんだ……?
取り柄の有無で、成績の優劣で、将来が有望だのなんだのってだけで、どうして生き延びた人間への態度を変えられる!
俺には疑問でならなかった。だって、姉さんはただの被災者として扱われ日本中からその安否を心配されたし、奏さんはその死を多くのファンから悔やまれた。
なのにどうして立花は、生き延びたのに疎まれるんだ!
そんな疑問を抱きながらも、俺は飛び出せなかった。
悪意ある言葉の石打ちに晒され、涙を堪えている彼女をすぐ近くで見ていながら、俺は何も出来なかった。見ている事しか出来なかったのだ……。
何故、俺は動けなかったのか。理由は考えるまでもない。
あの頃の俺は、とても臆病だったのだ。
クラスメイト達から立ち昇る負のオーラに怖気づき、勇気を振り絞れなかった。
それに、俺が彼女の側に立った所で何かが変わるとも思わなかったのだ。
ひょっとしたら悪化するかも、とさえ考えた。
俺が風鳴翼の弟だという噂は校内中に広まっていた。もし、あそこで立花を守ろうと立ち塞がれば、俺だけでなく姉さんにも悪意の矛先が向く可能性もあったかもしれない。
または、俺が姉さんの事を引き合いに出して、この疑問をあの場の全員に問い掛けていれば、虎の威を借るような形にこそなれ、あの風潮に問いを投げ掛けることが出来たかもしれない。
しかし、結局俺は何も出来なかった。それが悔しくて、悔しくて……血が出るくらい唇を噛んだ。
結局そ
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