第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第3節「記憶のあの娘はガングニール」
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してうだうだしてやがるんだ、しっかりしろよ俺!
「おっと、時間が迫ってる。純、何か予定でもあったのか?」
「あ、ごめん。また今度でも大丈夫だから、行っていいよ」
「ありがとう。じゃあ、俺行くから!」
「会えるといいね、その人に!」
「……そう、だな」
親友からの言葉が、少しだけ心に刺さった。
彼女から遠ざかろうとしている自分に嫌気がさした。
手を伸ばしたいと言っておきながら、彼女から逃げようとしているなんて……。とんだ偽善者だ。これじゃあ俺、あの教室の腐れ外道共と変わらないじゃないか!!
……でも、俺がやるべき事だけは見えている。本来なら関わるべきでない彼女が、戦場に立ち、人々を守る為に戦っている。
ならば、俺は今度こそ……彼女を守らなければならない。
たとえ自己満足だとしても、これは俺に与えられた懺悔の機会。あの日からずっと待ち望んでいた贖罪のチャンスだ。
戦場に立つ彼女に降りかかる火の粉を、この手で払う事は出来なくても、せめてその足場を支える事くらいはできるはず。
歩みが自然と早まる。この決意、必ず伝えてみせる!
秘密のエレベーターで、地下何千mという距離を降りていく。
ここは特異災害対策機動部二課の本部。姉妹校、私立リディアン音楽院の地下に存在する秘密基地。ノイズに対抗する力を備えた人類最後の砦だ。
エレベーターを降り、無機質な廊下をまっすぐ進んで、壁際の大きな鉄扉の前に立つ。
この奥がコンソールルーム。特異災害対策機動部二課の中枢であり、オペレーターが現場をモニタリングし、司令である叔父さんが指示を下している場所だ。
深く息を吸い込み、深呼吸。緊張で不安定になる呼吸を整え、一歩踏み出す。自動ドアになっている扉はすぐに開いた。
その奥に広がるモニターだらけの広い部屋には、キーボードに指を滑らせるオペレーターさん達の席が並ぶ。
そして、その中心に立っている厳つい体格の男性が、こちらを振り向いた。
「来たか。それで、わざわざ俺にアポ取って来たってことは、余程大事な話なんだな?」
「当たり前です。今日は俺の覚悟を、叔父さんに伝えに来たんですから」
俺や姉さんと真逆だが、父さんに少し似てツンツンしている真っ赤な髪と髭。
髪と同じく真っ赤なワイシャツに、胸ポケットに先端を入れたピンクのネクタイ。
広い肩幅から、シャツの下には鍛え上げられた肉体を誇る男なのだと察するのは容易い。
しかし、金色の瞳は力強さと同時に優しさが宿っており、大人の風格を放っている。
この人が特異災害対策機動部二課司令、風鳴弦十郎。俺達姉弟の叔父であり、俺の師匠。俺が知る中で一番頼りがいのある大人だ。
「ほう
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