第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第3節「記憶のあの娘はガングニール」
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。だからこそ、純粋で真っ直ぐな思考で行動できる。現場慣れしてしまった身には一見、短所として映るかもしれませんが、だからこそ僕達が見落としていた物を拾って来てくれる。私はそう考えています」
「緒川さんは翔に甘いから、そういう事を言うんですよ」
これは手厳しい、と笑う緒川。もっとも、その緒川に甘やかされてるのは翼も同じなのだが。
「それで、翔はまた二課に入りたい、などと言い出すつもりでしょうか?」
「おそらくは。でも、多分今回は何がなんでも折れないと思いますよ」
交差点の赤信号で停車する。車が止まると同時に、翼は緒川の方を向いた。
「何故そう思うんです?」
「翔くんの目が本気だったんですよ。響さんの話をしたら、いつになく真剣な顔になりましたよ」
「立花の?」
「なんでも、中学の頃のクラスメイトだそうです」
「立花が翔の級友だと!?」
案の定、弟と同じように驚く翼。本当にそっくりだ、と思いながら緒川は微笑む。
「しかし、元クラスメイトとはいえ、あそこまで興奮するものだろうか?」
「鈍いですね、翼さん」
「なっ!?何がです?」
「私は調査部ですが、他人の心の中までは調べられません。ですが、推察する事くらいならできます。翔くんの反応から察するに、おそらく彼は──」
信号が青に変わり、車は走り出す。
遠ざかっていく車体は、夜風を斬って走り去って行った。
「翔〜、この後の予定は?」
午後の授業が終わった頃、親友が鞄片手にやって来る。
俺は教科書とペンケースを鞄に仕舞い、席を立った。
「悪いな、今日は用事が入ってるんだ」
「用事?お姉さんのCDは受け取ったんだろう?」
「実は……中学の頃のクラスメイトに会えるかもしれないんだ」
「会える……かもしれない?」
そこで何故疑問形?と首を傾げる親友。
その反応は当然だ。
実際、立花に会いたいという気持ちは本当だ。リディアンが二課の真上である以上、エンカウント率は高い方なのだろうが……俺としてはまだ心の準備が出来ていないというか……正直、気まずい。
目の前にあったのに、俺はその手を取らなかった。恨まれていても仕方がない。
逆に、覚えられていない可能性だって高い。恨まれていない分気まずさは減るが、それは俺がその程度の男だったのだと自覚することになる。
どちらにせよ、会うには心の準備が足りない。だから気になりこそすれ、まだ会いたくないと願ってしまうのは俺の弱さが故だ。
会いたい、といっても遠巻きに顔が見れればそれで充分。それ以上を望む必要は無いし、その資格も俺にはない。
クソッ、自分が思っていた以上に面倒臭い男だった事に腹が立つ。こんな時、姉さんならもっとスッパリと決断しちまうだろうに……。
どう
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