第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第2節「過去からの残響」
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ールが、2年の時を経て姿を現したのだ。
姉さんにとって、それは親友の忘れ形見のようなものだっただろう。
しかし──
「奏さんの忘れ形見を何も知らない、戦士としての心構えもないぽっと出の一般人が受け継いだのが気に食わない、って事ですか。気持ちは分からなくもないですけど……流石にそれ、姉さんも大人気ないのでは?」
「それが……彼女、意図せずして翼さんの地雷を踏み抜いてしまいまして……」
話を聞くと、どうやらその少女にも非がないわけでもないらしく、ピリピリしている姉さん相手に「私が奏さんの代わりになってみせます!」と言ってのけたらしい。
「あー……それはその娘に悪気がなくても、姉さんの地雷を的確に踏み抜いてますね……」
一体どんな能天気なんだろう。姉さん、その娘に泣きながらビンタかましたらしいし、幸先悪いなぁ……。連携が取れず、戦場で不協和音をもたらすのは確実じゃないか。
「でも、悪い子じゃないんです。きっと、翼さんとも仲良くなれると思いますよ」
「だといいんですけどね……。ところで、そのガングニールの子ってのは?」
「適合者の個人情報を部外者に漏らせないことくらい、翔くんも分かっているはずじゃないんですか?」
「いいじゃないですか。所属されてはいませんが、俺も二課への出入りは許されてますし。今度会った時、姉さんとどうすれば仲直りできるのか、アドバイスくらいはしてあげたいんですよ。その娘の為にも、姉さんの為にもです」
緒川さんは、仕方ないですね、と笑うとその少女の写真をスマホに出してくれた。
その顔と名前を知った瞬間、俺は瞠目した。
「……緒川さん、その名前本当なんですよね!?」
「え、ええ。偽名も伏字もありませんよ?」
だって、その名前は……その顔は……一日たりとも忘れた日はない、あの娘のものだ……。
モノクロの記憶の中、俯き、涙を堪え、空元気で笑って見せた顔だ。
「立花……響……」
喪った姉の親友。助けられなかったあの日の少女。
2年前の運命の残響が、鳴り響き始めた瞬間だった。
「立花がガングニールの適合者……だと……!?」
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