第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第2節「過去からの残響」
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今のは彼に体術を教えてくれた叔父の口癖だ。本当に、どうしてそれだけで瓦礫を発勁で受け止めたり出来るようになるのか……。もっとも、今使った技なんて、基本のきの字くらいなんだけど。
「さて、あとはお前を避難所まで連れてって、警察に引き渡せばそれで終わりだな」
「ったく……本当にわけわかんねぇガキだな。何で放っておかねぇんだよ」
「盗みを見逃してくれればよかったのに、ってか?」
「いや、それもあるけどよ……何故、わざわざ避難所まで突き出そうとする?テメェの命が大事なら、俺なんか放ってさっさと逃げればいいじゃねぇか」
不思議そうに。または半ば呆れたように。男は翔に問いかける。
そう問われると、翔はふと考えて……やがてこう答えた。
「善人も悪人も、命の重さに変わりはないからな……。手を伸ばせる所にいるなら、その手を掴まないと後悔する。ただ、それだけだ」
「そいつは……自己満足か?」
「かもしれない。でも、少なくとも心は痛まない。助けた誰かと繋がっている、知らない誰かが悲しまなくてもいい。その方が、後味は悪くないからな」
「そうかよ……。青臭いガキらしい言葉だ。でも俺には生活がかかってんだよぉ!!」
翔の注意が逸れた瞬間、男は身を捩って翔の技を抜けようとする。
しかし翔はそれを許さず、後頭部を狙って峰打ちを決めた。
「だからって人様に迷惑かけんな。あんたにはその場しのぎでも、ここで働く人達にとっては死活問題だ」
意識を刈り取られ、倒れる男。翔はそれを見て、独りごちる。
「だから言ったろ?ド突けば充分だってな」
直後、市街地から大きな爆発音が鳴り響いた。
それを聞くと翔は、コンビニを出て駐車場から周囲を見回し、音のした方向を向く。
灰色の爆煙が夜空へと昇るのを見て、翔は小さく呟いた。
「おつかれ……姉さん」
やってきた警官に男を引渡し、俺は駅へと向かっていた。
帰りが思ったよりも遅くなってしまったため、純には電話を入れてある。
ノイズ出現の影響でモノレールのダイヤが遅れているため、残念ながら門限には間に合いそうもない。
タクシーでも拾えればいいんだけど……。
などと考えていたその時、後方から走って来た黒いベンツが隣に停車した。
振り向くと窓が開き、運転手がその顔を見せる。
「翔くん!」
「緒川さん!」
緒川慎次。風鳴家に仕える、姉さんの世話役兼マネージャー。ホストとして仕事をしていた影響か、常にスーツ姿で私服を見た事がないけど、仕事ぶりは完璧で物腰も柔らかい。
正直言って、姉さんを任せるならこの人しかいないってくらい信頼出来る人だ。
「どうしたんですか、こんな所で?」
「姉さんのCD、ショップまで受け取りに来てたんですよ」
「な
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