第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第1節「掴めなかった手」
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窓の外に広がる青空から差し込む暖かな陽射しに照らされながら、俺達二人は箸を進め始めた。
時折、彼はとても遠い目をする。
それは空を見上げている時だけじゃなくて、何やら物思いに耽っている事が多い彼はいつもそういう目をしているのだ。
放課後、誰もいない教室を見つめている事もある。
特に見上げているのが夕焼けの時は、より一層……何処か悲哀を漂わせる顔になる。
日本を代表するトップアイドルの弟というだけあって、その瞬間の彼は何処か絵になるんだけれど、普段は見せない陰が垣間見える。
何故そんな顔をするのか。知り合ってしばらく経った頃に聞いてみたことがある。
答えは一言、「なんでもない」とだけ。
家の事情なんかは、お互い自己紹介をした際に言ってくれたんだけど……どうやら、その件は彼が抱え込んでいたい話題らしい。
でも、僕はあの目を知っている。あれは間違いなく、深い後悔を抱いている人間の目だ。
掴めなかった手を思い出しては、自責の念に苛まれる人間の表情だ。
その蒼空のように澄んだ瞳の奥では、常に曇天が渦を巻いている。
僕と同じだ……。
二度と会えなくなった人がいる。その人を思い返す度に、思うのだろう。
「何故あの時、こうしなかったのか」と……。
だから、それ以来は敢えて触れないようにしている。
その話題を広げたところで、僕も答えは持っていないのだ。
でも、僕達が出会ったのは多分、二人で答えを見つけるためだと思う。
同じものを抱えている二人が出会ったんだ。偶然ではない、これを運命と呼ばずして何と呼ぶのか。
いつか、お互いにもっと信頼を重ねて、相手の心の底に触れられるようになったら、その時こそは──。
今日の授業を終え、モノレールでいつものCDショップを目指す。
念の為、純には帰りが遅くなるかもしれないと伝えてある。
発売は昨日で、しっかり予約も入れておいた。
が、昼休みに知ったんだけど、その昨日のノイズ出現地点はいつものCDショップだったらしい。
……正直に言うと、ショックだった。
逃げ遅れた人々は多くが、姉さんのニューアルバムを楽しみにしていたファンの人達だったろうし、いつも素敵な笑顔で迎えてくれていたあの店員さんも、死体すら残らず炭素分解されてしまったのだろう。
平穏な日常を、一瞬で炭の塊に変えてしまうノイズ……。これほどまでに恐ろしい驚異が、未だかつて存在しただろうか。
名前さえ知らないけれど、俺の日常の一部だった人たち。その中に少なからずも、二度と会えなくなってしまった人達がいる事に俺は涙した。
でも、そんな驚異に立ち向かっている人達がいる。「特異災害対策機動部」と呼ばれる、認定特異災害
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