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俺様勇者と武闘家日記
第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
王様の頼み事その二
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だったかな。真っ暗だったから夜だな。全然見たことないんだけど、なぜか懐かしさみたいなもんを感じて……そのあとおっさんの幽霊が出てきた」
「幽霊!?」
 その一言に、一瞬背筋が凍りついた。私は昔から幽霊とかおばけとかがものすごく苦手なのだ。
「そのおっさんも全然知らない人なんだけど、やっぱり見たことあるような感じがしたんだよな……。あー、なんかうまく言えねーんだけど」
「つ、つまり夜の墓場でおじさんの幽霊に会ったってことだよね。それでその後は?」
「は? それで終わりだけど。ていうか、途中で外にいる奴らに起こされた」
「外にいる奴ら?」
 ぴっとナギが人差し指を窓の方へ指す。つられて窓の方を見たけど、窓の外に人影はない。
「あそこの窓に人がいたって事?」
「ああ。オレが起きたときにはもうそこにいなかったけど。つーかお前ら、あんなうるさい声がしたのに気づかなかったのか!?」
「うん。疲れてたからぐっすり寝てた」
 私がきっぱり言うと、ナギは「お前ら幸せだなー、オレみたいな繊細な人間にはうらやましいわ」とかぶつぶつ言い始めた。何かそれ、私たちが図太い神経してるみたいな言い方に聞こえるんだけど。
 若干腹が立ったが、女将さんが私の心を覗いたかのようなタイミングで朝食を運んできてくれたので、私は反論する言葉を飲み込み、目の前に現れた空腹を満たす数々の食べ物に全神経を集めた。
「うわー、おいしそう!! いただきまーす!!」
 バジル入りの特製ドレッシングで和えたグリーンサラダ、焼きたてのライ麦パン、ジューシーなソーセージを添えた半熟卵の目玉焼き、絞りたてのフルーツジュース。
 どれも食欲をそそる料理ばかりで、私は目を輝かせた。
 頬張るようにしてそれらを胃袋に収めていると、厨房へ戻ろうとする女将さんが小さくため息をついている音が聞こえた。
「どうかしたんですか?」
 反射的にそういうと、おかみさんは無意識にため息をついていたのか、驚いた目で私を見た。
「ああ、ごめんよ。聞こえちまったかい? 気に障ったのなら謝るよ」
 私は首を振ったが、女将さんは申し訳なさそうな顔をしている。私はどうしても気になるので、再びため息の理由を聞いてみた。
「実はつい最近、カザーブにいる身内に聞いたんだけどね、北のノアニールからの連絡がここ数年ぱったりと途絶えてるみたいなんだよ」
「ノアニール……」
 確か名前だけは聞いたことがある。けれどカザーブ出身の私でさえ、その村の名前が話題に出てくることはほとんどない。なにしろここロマリア地方は、南は比較的温暖で平野が続いているが、北に行けば行くほど山岳地帯が広がっていき、行く道も険しくなっていく。加えて、気温の差も激しい。そのため、自然と人の行き交いも少なくなる。
 ただでさえカザーブですら旅人が村に入
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