第四部五将家の戦争
第七十四話 虎城防衛線会議
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の為に兵を動かす事は吝かではないが、むしろ彼らが稼いだ時間をもって皇龍道防衛の強化に重点を置くべきだ」
守原大将の言葉に西州公も和やかな顔つきを崩さず頷いた。
「守原殿の御言葉も御尤も。だが、彼らも十分に時間を稼いだ。
それに万に近い将兵を救う事は現状では十二分に価値があるのではないか?ここで何も行動を起こさないのならば兵の士気にも関わろうぞ」
「……」
西州閥の長が向ける無感情な瞳を護州公弟が堂々と受け止める
「おや、西州殿、なにかあるかね?」
「いや、あるいは貴公、なにやらもう少し事情があるのではないかとな……そんな気がしたのだ」
西州の老公爵は無表情に返事をした。宮野木の若い公爵は無関心を装いながらもピクリ、と茶を持った手が震えた
「ハ!ハ!ハ!何を言うのやら」
守原大将は一見朗らかそうに笑うがその目は表情と対極の冷徹なものが覗いていた。
静寂の中、我関せずと一切議論に参加していない須ヶ川大将が茶菓子を齧る音が響く。
駒城中将は内心を読ませぬ柔らかな表情を崩さずに口を開く。
「本体の到着時期と雨季が近いのであれば尚更です、<帝国>軍は大軍を集結させていますが、それをまとめて動かす兵站機構はさほどではありません。雨季の泥沼にはまりそのまま冬季戦にもつれこむよりも、より確実な春季攻勢を選ぶはずです。ならば雨季に入る直前に六芒郭に籠る支隊を支援し、そのままこちらの防衛線に引き釣り込む覚悟で臨めば敵も退くでしょう」
「そうよな」西原大将は頷き、そして黒茶を飲んだ。守原英康は目を細める。
「然り。新城支隊が担っていた役目が重大なものであった事は理解しているとも」と守原はまくし立てる。「だが、六芒郭は堅固なる事はこれまでの戦いぶりからも明白と言えよう。助ける価値もあるだろう、だが我々の護る皇龍道を蔑ろにしてよい道理はあるまい!連中が複数個の師団を投入するとすればここだ!!ましてや、いたずらに軍を動かし、<帝国>軍につけいられるとならば……本末転倒ではないか!我が軍がまもる皇龍道こそが皇都までの最後の壁であるのだぞ!」
守原の視線がある種の殺気を帯びた。なにかしらの道理が整ったのだろうか?
「……駒城殿。特に貴公も親王殿下も、彼の辣腕を買っておられる」
「その通りですな」
保胤はその視線を慎重に受け止めた。
「いやはや、あれ程の兵法家がおられるのも羨ましい限り。とはいえ貴公の手腕も実に素晴らしく、そのうえ、駒州は虎城に接しておる。駒州軍は各軍の中でも随一よ。
雨季が訪れ、貴公の軍勢が動けるようにならば、義理とはいえ兄弟、必ずや力を合わせ、困難を切り抜けよう……?」
保胤は苦々しい表情を浮かべて頷く。守原英康の言葉も兵理に適ったものである。<帝国>軍が大軍をもって皇都へ進軍するのならば
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