第一部
呪縛
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ま立ち上がってくることは無い。
完全にKOしたようだ。
(何だ今の。火事場の馬鹿力……なのか?)
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一人を倒したがまだ四人居る。
士気を取り戻した刻名の生徒は取り囲んで四方から紫闇の守りも構わず叩きのめす。
(どれだけ奮起しても、どれだけ強い想いを持っていてもモブキャラなことに変わりはない)
だから掴めないのか。
勝利の栄光を。
紫闇は激しい変化を欲した。
運命を覆すほどの。
「無駄にしつこかったな」
刻名館の生徒が外装に力を込める。
止めを刺す気だろう。
彼等がその一撃を振るおうとした直前、予想外の乱入者が鈴の音色を響かせ現れる。
「楽しそうだね。私も混ぜておくれよ」
声の方には一人の女子と青年。
紫闇は二人を知っていた。
少女は《江神春斗》に助けられる前に老人と一緒に居てぶつかりかけた娘だ。
黒い帯に白い甚平という姿。
背は紫闇より僅かに低い。
紫闇が170cmくらいなので165cmくらい。
長い艶の有る黒髪には鈴飾り。
青年は全身が真っ白。
薄幸が似合う線が細い美形。
背は180cmほど。
(あの人が何でこんな所に)
彼は紫闇の幼馴染みで《エンド・プロヴィデンス》の兄でもある《永遠レイア》と言い、紫闇が実際に知る【魔術師】の中でも《的場聖持》と並ぶ最強の部類。
「ちょっと待ってて紫闇。直ぐ終わるから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
レイアの放った言葉の直後、幼さの残る美貌の少女は猛獣が獲物に見せるような恐ろしい笑顔を見せると白銀の[魔晄防壁]を展開。
次に顕現したのは彼女の外装。
右腕の肘から先を隠している。
厳めしい黒鉄の籠手。
紫闇の外装と同じような形状。
規格外と言われる欠陥品の外装だった。
が、その強さは桁外れ。
手加減しているのは解るが見えない。
紫闇の五感では捉えることが出来ない程に少女は迅速果断に躍動している。
少女の鈴飾りが鳴る度に刻名館の生徒は体から馴染みの無い音を鳴らす。
紫闇は洩れる音が何か気付く。
人体の破壊される音だ。
少女は訳が解らない速さで武術を行使しながら人の体で破壊の調を奏でている。
彼女は愉しそうに嬉しそうに嗤う。
恐ろしくて勇ましく、怖ましいのに美しい蹂躙を眺めていた紫闇だが、遂に意識を手放して眠りに落ちた。
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