【第1話】夢見と叶夢、そしてお父サン。
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「カナム、カナム……ワタシ、強くなりたいヨゥ……」
『おねーちゃん……』
「あんなやつらやっつけて、はやく、おかあサンのところに、かえりたいヨゥ……!」
そう強く願った、そのときだった。
「やあ!」
初めてソレを見たとき、驚きで声が出なかった。
────ネズミが、二本足で立って喋っていたから。
「ね、根津!? 何故ここに……!?」
「HAHAHAHAHA! なに、ちょっとした散歩だよ! ついでにヒーロー活動もね!」
発作的な笑い声とともに、ネズミは手にしていたスイッチのような何かを押した。
────Booooooooooom!!!!
どこかで、何かが爆発する音が聞こえてきた。
「やぁ! 君たちが眠瀬くんの子どもたちだね?」
「あ、アナタは、ダレ……?」
「僕は根津! 君たちを迎えに来た――――ヒーローさ!」
HAHAHAHAHA!とやっぱり発作的な笑い方をするそのネズミ――――もとい根津サンは、私たちの小さな身体をそのふさふさな腕で抱き上げてくれたのだ。
「というわけで、今日から僕が、君たちのパパだよ!」
怒涛の救出から数日後、私たちは再び根津サンのふさふさな腕の中にいた。
『なに勝手なこと抜かしてるですかこのネズ公』
私たちをあやしながらサムズアップする根津さんに対し、叶夢が辛辣なセリフを吐く。
ここしばらくたくさん本を読んだおかげで、私たちの言葉は前よりもはるかに上達していた。
『叶夢たちにおとーさんなんていらねーのです』
「その声は眠瀬叶夢くんだね? 初めまして、僕は根津だよ。パパだよ!」
『人の話を聞けなのです! 何なんですか、このびっくりアニマルは! 親を名乗るなら種族からやり直せなのです!』
何気に話すのが初めてとなる叶夢は、ここぞとばかりに暴言を放つ。
叶夢が覚えたての言葉をわあわあと好き勝手に言っている間、私はただただ呆然としていた。
「おとう、サン?」
「なんだい?」
『ちょっとおねーちゃん!? この生物を親だと認めちゃうのですか!? 叶夢はぜーったい嫌なのですよむぐぅ!』
元気に喚いている片割れを、一度黙らせる。
申し訳なく思うが、話が進まないので致し方ない。
「根津サンは私たちのお母サンを知っているんデスカ?」
行方知れずとなった、私たちの母親を。
生まれたばかりの私たちの前から消えてしまった人のことを。
「君たちのお母さんは、僕の友達なんだ」
「……お母サンは、私たちを捨てたんデスカ?」
それは、周囲の大人たちに怖くてずっと訊けなかった質問
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