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戦国異伝供書
第六十二話 赤と黒から黄へその十三

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「しかと」
「その様にな」
「ふむ。皆が茶を飲めれば」
 彦五郎も述べた、茶を飲みつつ。
「よいでおじゃるな」
「そう思われますか」
「麿達だけでなく」
「民達もですか」
「誰もが飲めれば」
 そうなればというのだ。
「いいでおじゃるな」
「そう思われることが大事です」
「一国の主としてはでおじゃるか」
「はい、実によいことです」
 こう今川の次の主に言うのだった。
「そのお心忘れなき様」
「それではでおじゃる」
 彦五郎は雪斎の言葉に気をよくしてさらに述べた。
「麿の政はでおじゃる」
「民達がですな」
「茶も米も何でも」
「多く作り」
「無論街も道も堤も整え」
 そちらも忘れずにというのだ。
「よき国にしたいでおじゃる」
「左様ですか」
「そう思うでおじゃる」
「左様ですか、しかし」
「戦もでおじゃるな」
「お忘れなき様」
「若様、何かあればです」
 ここでも同席している朝比奈が彦五郎に言ってきた、雪斎は彼も呼んでそのうえでこうして茶を飲んでもらっているのだ。
「その時は和上と竹千代と」
「お主をでおじゃるな」
「お頼り下さい」
 こう未来の主に言うのだった。
「我等命を賭して若様をお守りしますので」
「そう言ってくれるでおじゃるか」
「はい、是非」
「わかったでおじゃる」
 彦五郎はその言葉に頷いた、そうして今は茶を飲むのだった。雪斎が煎れた茶を。


第六十二話   完


                  2019・8・16
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