episode10『鬼の居ぬ間に』
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むと、観念したように肩を落とした。
すっと、彼女の表情が引き締まる。それまで漂っていた穏やかな空気が鳴りを潜めて、周囲にはどこか緊張した雰囲気が漂い始めた。
「……あまり考え過ぎないように聞いてくださいね」
「……?」
「逢魔くん。流石に、君のOI深度が少々洒落にならない領域にまで深まっていることぐらいは聞いていると思います、というかお願いですから聞いているって言ってください。でないと、事と次第によっては学園長をぶん殴っておくことになりますので」
「き、聞いてます聞いてます!」
若干恐ろしい雰囲気を漏らして話すサトリに、慌ててフォローを入れる。「ならよかったです」なんて言いながらすっと怒気を消した彼女は、少し視線を宙に彷徨わせる。さっきのように少し躊躇うような素振りを見せたサトリはやがて決心したように、真面目な顔で話を進め始めた。
「私の鉄脈術、『一期一会、我が眼、えにしを辿る瞳なれば』は、人の想いと縁を覗き見る鉄脈術なんです。細かい説明は省かせてもらいますが、先ほどは逢魔くんの“世界との縁”を覗き見させて頂きました」
「……世界との、縁?」
「はい。この『物質界』との縁……言い換えれば、繋がり、でしょうか。貴方を貴方としてこの世界に繋ぎ止める鎖……というよりは、錨のようなものです。通常、この錨はあまりにも重く、どうこうしようとして出来るものではありません。己が己として物質界に在ることを、疑いなどしませんから。
……ところが、一部のOI能力者。あまりにも重度のOWを抱えた方は、その限りではないのです」
曰く。
位階が振鉄――さらにその中でも重度の歪む世界を抱えたものの中には、稀に意識が『歪む世界』に引きずられて、己が存在する世界が曖昧になる事があるという。
歪む世界とは即ち、OI能力者が垣間見る霊質界の風景だ。そして歪む世界に取り込まれるという事は即ち、己の本来の居場所を見失うという事。
だからといって、人間が霊質界に向かう事は無い。だが、本来の居場所たる物質界においても、その者は異端の存在となってしまう。
詳しい原理は分かっていない、だが、その者はいずれこの世のものではなくなってしまう。別の何かに『羽化』してしまうのだ。
「……それ、確か、白崎さんが言ってた、『崩界』っていう」
「はい。それが崩界……行き過ぎたOIが膨れ上がって、冥質界の情報生命体、『カセドラルビーイング』に“成って”しまう現象です。そして」
ジッと、サトリがシンの眼を見つめる。「しつこく言うようですが、心を冷静に、落ち着
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