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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode10『鬼の居ぬ間に』
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らっしゃるとか」

「と、東京に!?じゃあ、あの、えっと……」

「……?あぁ、ヒナミちゃんの護衛の事なら心配いりませんよ。代わりの製鉄師が現在も周囲を監視していますし、彼らの手に負えなくとも、常に連絡が取れるようにして下さっています。あの方なら戻られるまで10秒も掛かりません。そういう鉄脈術をお持ちですから」

「は、はぁ」

 鉄脈術ならばそう言ったこともあるのだろうか、あまりにも途方もなくてイマイチ現実味がない。魔鉄技術によって随分と交通手段の利便化は進んだが、それでも大阪と東京を行き来しようと思えば、最速でも片道2時間は掛かるだろう。

 それを10秒と掛からない、という。昔から続く某ネコ型ロボットのどこにでも移動できるドアを連想した。あの人はワープの力でもあるのだろうか。

「ふふ、あんまり信じられないといった顔ですね」

「……まあ。製鉄師っていうのがそう言う存在だっていうのは知ってるんですけど……やっぱりこうしてアニメとか漫画みたいなことを“出来る”っていわれても、どうにも信じがたいというか」

「製鉄師の活動している姿なんて、普通に暮らしていたらそうそうお目にかかりませんしね……でも、君にも見える世界(オーバーワールド)がその証明です。自分でも分かるでしょう?」

 にこやかな笑みのままでもっともな返答を受けて、つい黙りこくってしまう。確かに、シンの見える世界だって現実的なんて言葉からは遠くかけ離れたものだ。自分の姿が鬼に見えるなんて、もし歪む世界が認知されていなければ幻覚でも見ているだけだと一蹴されるだけに終わるだろう。

「大丈夫です。学園長は一見だらしないようですが、実力は日本皇国でも指折りですから」

 安心させるためなのか、それとも元からそういった人なのか、心を落ち着けるような喋り方でそう締めくくった彼女は、湯飲みのお茶をくい、と少しだけ飲む。シンも小さく頷いてお茶に口を付ければ、思いのほか苦くって内心で少々顔をしかめた。甘いものが食べたい。

 ……と、そうではなかった。シンがここに居るのは別の目的だという事を、今更ながらに思い出す。

「それで、検査、っていうのは」

「っとと、そうだった。君に今日来てもらったのは、ちょっと特殊な検査をしなきゃいけないからなんです。……というかまあ私がその担当なんですけれど、そんな緊張はしないで下さいね?すぐ終わる簡単な検査ですから」

 頬を掻きながら笑う彼女の声と共に、背後から扉の開く音がする。気になって振り返れば、そこに居たのは随分と小柄な赤毛交じりの少女……というか、どうやら魔女のようだった。

 光の当たり方によって所々が銀色に見えるその髪は肩口で切り揃えられて、体躯にしては随分と大きなコートを纏っている。裾は地面すれす
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