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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第七十三話将家という生き物
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頑張ってくれたよ、窪岡といい頭が上がらん。西原を巻き込んだ以上、ここで守原が下りる事も出来まい」

「裏で手を回して有力者の顔色をうかがい、本当に〈皇国〉軍、なのかな」豊久が自嘲するようにそう呟いた。

 気持ちはわかるよ、と保胤も苦いものを堪えるように答えた。
「だが軍に所属する者達は大半が皇主陛下の家臣である我々の家臣なんだ、そう“認識”している以上はそうなるのが“まつりごと”だ」

「わかっています、えぇそれでも――申し訳ございません、愚痴です」

 最初に愚痴を言ったのは私だよ、と保胤は力を抜いた笑みを浮かべた。
「兎に角、だ。直衛――というより近衛総軍主力部隊と龍州軍やら西州やら東州軍やら背州やら御国の各地の部隊を寄せ集めた一万弱の部隊を救援しなければならない。
裏ではともかく、現実としてこれは文句のない御題目だ」
 特に衆民院が後備動員予算を握っている状況ではな、と保胤はニヤリと笑った
「問題は作戦後だが、これは結果次第になる無理をして皇龍道への攻勢を強めるのか
あるいは内王道を突くのか、それとも東沿道の出口を完全に封鎖しようとするのか」
 救援作戦の概要は単純だ。三道よりそれぞれ敵兵力を誘引する。見込みとしては三個師団、12万を引きはがすことができる。冬営後の面倒を考えるのであれば野戦軍撃滅の好機を〈帝国〉軍が逃すはずはない、というのは軍監本部にいる者達も五将家の者達もほぼ確信していた。
 ここで時間を稼げば後は防衛司令、支隊長である新城の判断で降伏か脱出かを選べる――状況次第だが脱出は難しいかもしれない。無論、剣虎兵であるから“状況次第”では可能だろうが

「そういう事になっている。分けられるのならばその方が楽だが」「無理です」
「だろうな、直衛もそういってきたよ‥‥それで君に任せることがある」

「‥‥はい、閣下」
 さて何を任されるのだろう。直衛が脱出した後の後衛戦闘かな。それとも北上する西州軍の支援陽動とかだろうか。まぁ本来の目的は六芒郭から兵力を引っぺがす事、そして冬営の間、こちらの動きを警戒させることだ。

「剣虎兵二個大隊を君に預ける。剣虎兵三個大隊、銃兵二個大隊。作戦決行時に六芒郭包囲している〈帝国〉軍を突いてほしい」

「‥‥‥は?」
 ん、待て、落ち着こう。今回の作戦は戦略規模の陽動だ。その中で俺が振られた役目は‥‥要するに‥‥敵が包囲する要塞を外から‥‥?
あぁ‥‥そういう事か。そういう事か!!


同日 午後第四刻 駒州軍司令官大天幕 司令官執務室
駒州軍司令官 駒城保胤中将


「つまりはこういう事ですか?“駒城は身内を見捨てない”」
「そういう事だ」「‥‥何故私なのですか?」保胤は、ふっ、と笑みを浮かべた。
目の前の青年大佐の声は鋭い。身内の重
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